第34章 反抗期
「まだ怒ってるか…?
傷つけるつもりはなかったんだ。
勘違いさせたなら悪かったが…
誓ってバカにしたんじゃねぇよ」
「…怒ったんじゃない…」
「ん…?」
「傷ついた」
「あー…悪ィ」
さっきの続き、
再び私を抱き寄せようとゆっくり力を入れる。
さっき私が拒否してしまったせいで
様子を窺っているようだった。
そう、よね…
いくら天元でも、拒まれたら傷つくもんね。
ごめんなさいという気持ちを込めて
自分から抱きついてみる。
そうすると天元の身体から
フッと力が抜けたのがわかった。
「睦はさぁ…」
天元は長い腕を私に巻きつけ
愛しげに身体を擦り寄せて
何かを言いかける。
「…なぁに?」
「万年反抗期だな」
……。
「なに…?」
「俺には反抗してばっか」
言われている事と
されている事に落差がありすぎて
天元の気持ちを推し量れない。
憎らしい?
それとも、許される…?
少し不安を感じて固まった私を知ってか知らずか
天元は私のおでこに口づけをくれた。
「俺には、安心して何でも言える?」
私の不安は杞憂に終わりそうだ。
優しい物言い。
ひどく愛しげな。
「…うん」
私は素直に頷いてみる。
だって本当にその通りなんだもの。
無条件に、私の事を愛してくれる。
出逢った時から変わらない。
私がしたらいけない事はないって。
そう言っただけあって
ある条件を除いては総べて許してくれる。
理不尽に私が怒ろうが、
急にわがままを言おうが、
なんでもかんでも許してもらえると
まだいいのかな、もっといいのかなって
困った事に
どんどんつけあがっちゃうんだよ…
「そっか。俺としては願ってもない」
不思議な人。
「……そんなにいいの?」
つい、そんな事を尋ねてしまうほど。
「いいねぇ。
だって俺にだけだろ?
そう思うと幸せでたまんねぇなー」
「そう…」
よかったような、
よくないような…。
「普段きっちりしてる睦が
俺にだけはわがまま言うなんて
可愛いにもほどがあるだろ?」
「……わかんない」
「いいよ、わかんねぇならそれで。
俺はそれでいいんだから」