第34章 反抗期
それを両手で掻き上げてのかしたのを
私が抱きついたと勘違いした天元が
嬉しそうに笑って
再び唇を押し付けた。
さっきよりも時間をかけて
弄ぶような口づけは
私をその気にさせるには充分すぎる…
「もう全部。俺のこと好きでたまらないって
顔に書いてある…」
それは、そんな口づけするからだよ…
「そっか…それはしょうがないかなぁ…
だってほんとに、好きでたまらないんだもん」
「あらら、ヤケに素直だな」
憎まれ口をたたく割に
とっても嬉しそうな天元は
おでこや目尻、顔中の至る所に口づけを降らせた。
「だってそれはきっと隠せないし
ほんとの事だから。…
素直にならない意味もないでしょ?」
「いつになっても俺の睦は可愛いなぁ」
しみじみと言って
私の髪を何度も撫でる。
…天元はいつになっても、
私を可愛がってくれるよね。
いつでも、どんな時でも何があっても、
私がどんな状態でも、
…必ず優しいし、深い愛を感じるの。
「自分に素直でいたらいい。
睦が安心して本音を曝せる場所が
俺だったらいいなって思ってる」
「…そうなってるよ、ありがと」
「お前はすぐに遠慮するからな。
あいつら産まれてからは余計だ」
「それは…しょうがないよ」
何をするにも子どもが優先。
そんなの当たり前だ。
甘えた事ばかり言ってはいられない。
「今は、俺しかいねぇから
遠慮する必要ねぇぞ」
「ふふ…何をさせたいの?」
あんまり甘えさせる気満々だから
私はつい笑ってしまう。
お風呂も済ませて、
お屋敷の中はしんと静まり返っていた。
寝ようと思った時、
そういえば『お誘い』があったと
思い出した。……すっかり忘れていた事は内緒。
だってそれどころじゃない事件も起きたでしょ?
しょうがないのよ、色々な事がありすぎて。
必要もないのに、そんな言い訳を心の中でして、
私はこうして彼の腕の中にいるわけです。
そしてその彼は、
どうにか私に甘えさせようと目論んでいる様子…
「…何で私にはわからないのかな」
ふと浮かんだ、ひとつの疑問。
だって、あんまりにも不思議だ。