第34章 反抗期
「ヘェ…そうだったんだ。
それは僕の勘違いだったな。
でもよかったね、
おかげでお母さんが行ってくれたもんね」
……なんだか、トゲのある言い方。
睦月は、とても静かにだけど
怒っているみたいに見えた。
「あぁ、それはそうかもな」
天元も気づいていないわけがないと思うけど…
変わらずの態度だ。
「睦月やめなって。
もう食べよ?お腹すいた」
たまらず弥生が口を挟むも、
「お母さん可愛いもんね。僕も大好き」
睦月は止まらなかった。
ぶっきらぼうに放ったその台詞に
天元の笑みが引き攣った。
激しい違和感に、
つい弥生に目を向けると
弥生も助けを求めるように私を見つめていた。
えぇ…?私が何とかするの?
「ありがとう睦月、
弥生の言うようにお腹すいたでしょ?
もう食べようか」
わざとらしい程の笑顔を作って
私が睦月を振り返ると
「お母さんよりも可愛い人を見つけるの、
僕には無理かも」
潤んだ瞳でそんな事を言うではないか。
ははぁ、わかったぞ?
さては
お姉ちゃんに意地悪した天元に
仕返しをしているつもりだな。
「睦月、もうやめなさい。
お父さんがそんな手に乗るわけないでしょ。
ねぇ…?」
と、天元に向き直ると
恐ろしいほど不機嫌そうな顔を……。
ウソでしょ。
つい心配になって天元を覗き込んでいた私に
睦月がにっこりと笑った。
「わかってないなぁ。お父さんはねぇ、
お母さんが絡むとフツーじゃなくなるんだよ。
ついでに言うと、さっきのは僕の本心だから。
小さい時から言ってるでしょ、
僕がお母さんを守るからって」
…やっばい。
私まで乗せられてしまいそう。
その顔で可愛いこと言わないでもらいたい。
はぁ、違う違う。
大丈夫よ私は。
「ありがとう、頼りにしてるよ睦月」
落ち着いて答えると
少し目を見開いた睦月。
「さすがお母さんは冷静だね…」
それに比べて…、と
睦月がやった視線の先…
どう見ても不機嫌丸出しの男がひとり…。
睦月はわかっているのだ。
自分が、天元に男として見られている事、
それから、自分の顔が天元にそっくりな事。
あーあー…
「楽しくごはん食べようよぅ」