第34章 反抗期
何を言っているのやら…。
そもそもやめろと言ったのは
私の方なのに…。
「睦…?」
今度はピタリと立ち止まった私を
不思議そうに見下ろした。
私が見上げると、
フッと破顔して
「…かぁわいい、その気になっちまったの…?」
嬉しそうな声を上げる。
簡単に私を見透かしてしまうのだ。
どうしていいかわからずに、
キッと睨んだ私の背中を優しく撫で下ろし
「悪ィ、」
さっきよりも真面目な様子で
私を引き寄せた。
よしよしと髪を撫でながら
「…メシ、食いに行けそうか?」
ひどく気遣わしげに言う彼からは
詫び入る気持ちが伝わってくる。
「うん…、ごめんなさい」
やっとの事で絞り出したひと言は
情けないほど震えていた。
「なんで睦が謝んの?」
そうして目を見張る天元…
確かに、私が謝る所じゃないかもしれない。
でも、
「すぐおかしくなるから…」
怒ったり泣いたり、
相変わらず落ち着きのない性格…
……って、………あれ?
「いいんだよ、睦はそれで」
めげずに私の手を取ると
2人が待つ部屋に向かってゆっくりと歩き出した。
…痺れを切らしているだろうな。
「あ、よかったー。
お母さんでも無理なのかと思った」
顔を合わせた途端にホッと息をついたのは
当事者ではないが故に
幾分気の楽な睦月だった。
遅い、と文句を言われる覚悟をしていた私は
なんだか拍子抜けだ。
「何の事だ?」
どんな状況であろうと涼しい顔の天元は
当たり前のように私の手を引いたまま
自分の席へとついた。
弥生も睦月も
見慣れた光景だから何も言わないけれど
…もう気づいているんだろうな。
ヘンな夫婦って。
だからといって、やめない私も私だ。
「お父さんが部屋で食べるなんて意地悪言うから
…呼び戻せるの、お母さんしかいないでしょ」
「意地悪かよ」
「意地悪だよ。お姉ちゃんに当てつけるみたいに」
おや、睦月も結構言うんだな…
さすがはお姉ちゃん想いの睦月くん。
「あ、ばっかだなぁお前。
そんなふうに思ってんの?
俺があのままここに残ってたら
もっと余計なこと言っちまうとこだぞ?
弥生が泣く前にずらかった俺の優しさだ」