第34章 反抗期
「失礼します」
2人がそんな具合だから、
結局お迎えは私のお役目ですよ。
まったく…、いたいけな子どもたちを
どれだけ怖がらせたっていうのだろう。
睦月はいい子だし
弥生だって、
天元には偉そうにしないはずなのに。
『お母さんが行くのが1番平和』
『今のお父さんはお母さんの言う事しか聞かない』
2人の強い押しに負けて
ここまで来てしまったが
…ただ自分たちが
天元に会いたくなかっただけの話だ。
怒ってるから。
まったく、損な役回りは全部私任せなんだから。
解せない事が多すぎて少し不機嫌なまま
ススっと襖を開けて中を覗くと
こちらに背中を向けて座っている天元が見えた。
私に気づいているくせに
振り返ろうとする様子もなく
ただ前を向いたままじっとしている。
あーあ…どうしちゃったのよ…
私は部屋に入り襖を閉めると
座っている天元のすぐ後ろに膝をついた。
「天元、ごはんだよ。
まさかほんとに、
ひとりで食べるなんて言わないよね?」
いつもよりもぶっきらぼうな言い方に
なってしまったかもしれない。
耳聡く聞き分けるこの人相手に
吉と出るのか凶と出るのか…
でも天元は、何も言わずに背を向けたまま。
……珍しいな。
「…いくら天元でも、
食事をひとりでなんて許さな…っ」
食事はみんなで楽しくとるもの。
一家の大黒柱であろうと
そこを曲げる気はない……と
伝え切る前に
急に振り返った天元の
長い腕が私を抱き竦めた。
しかも、ものすごい力で…。
「…や、天元…くる、しいっ」
命の危険を感じるレベル。
苦しくてたまらないのに
押しのけることもできない。
「…てん、っ」
「悪ィ睦」
文句を言いかけた私に、
突然謝罪をする。
一瞬、何が起こったのかわからずに、
頭の中が混乱した。
謝られるような、何もされていない。
「……」
「お前が言わずに我慢していた事を
俺が全部ぶちまけちまった」
少しだけ力が抜けたおかげで
呼吸は確保されたけれど、
引き続き頭の中はしっちゃかめっちゃかだ。
一体彼は何の話をしているのやら…。
「でも我慢できなかったんだよ。
お前が傷つけられてんの知ったら
我慢なんか出来ねぇもん俺」