第34章 反抗期
「………あれ?」
台所で待っていたのに、
一品を運んだまま
いつまで経っても戻ってこない弥生を諦め、
主菜を手に襖を開けた私は、
室内のくらーい雰囲気に疑問を抱く…。
「…けんかでもしたの?」
テーブルの向こうに弥生、
こっちに睦月…。
お互いあらぬ方向を向いたまま
ずーんと落ち込んでいる。
俄然反抗期の弥生も、
睦月には優しいのにけんかとは珍しい…
そう思いながら
運んだ料理をお盆からテーブルに移す。
すると私の隣にいた睦月が
ふるふると小さく首を振った。
「…どうしたの?」
私が訊いてもこちらを見もせず、
「けんかなんてしてないよ」
睦月がぼーっとしたまま答える。
「そうなんだ。…よかった」
この2人がけんかしてる所なんか見たくないもの。
そんな事になったら
元気だけじゃなく食欲まで失くしちゃうよ。
「…でも…」
睦月は言いにくそうにして、
チラリと弥生に目をやった。
それにつられるようにして、
向こうを向いたまま
ぼーっと項垂れている弥生を私も見つめた。
…なにがあったのかな。
また私、気に触ることしちゃったのかしら。
でもごはんだし…
しょうがないか。
私は意を決して、
「弥生、ごはんにしよう?」
声をかけてみる。
「………」
「弥生…?」
「うん…」
やっと小さく頷いた弥生は
ずるずると、いつもの自分の席に移動する。
「体調が悪いわけじゃないのよね?」
「悪くない…」
「そう…?」
やけにはっきり答える割に
心ここに在らずといったふう…
なんだか心配になってくる。
でもあんまりしつこく訊いたら
うるさいなぁってまた言われちゃうのかな…
……気ィつかうなぁ。
重い気持ちで配膳を終えた私は、
「さ、お父さん呼んで来て?」
できる限り明るい調子で
いつものように声を掛けた、
「「え″ーっ!」」
つもり…。
なのに2人は、私が驚くほどの過剰反応…
「なになに?」
なぁに2人揃ってのこの反応は?
いつもなら我先にと
競って迎えに行くというのに…。
「何で?嫌なの…?」
「「………」」
にがい顔のまま、
2人は目を合わせた。
…んー?