第34章 反抗期
言葉にした途端、
悲しくなったのか
うっすらと目に涙を浮かべた。
泣き虫まであいつと同じなのかよ…。
弥生はだめだ。
大きくなってきて
ますます睦に似て来たから。
睦を叱ってる気になってくる。
可哀想に思えてくる…
いやいや俺、これは弥生だ。がんばれ。
「睦の仕事量を知ってるか?」
「……え?」
「あいつが1日にこなす仕事が
どんだけあるか知ってんのか」
「……」
知るよしもねぇかよ。
「朝起きた瞬間から休みなんかねぇぞ。
朝メシの支度に洗濯、布団干し、家中の掃除、…
それが落ち着いた頃に昼メシの準備、
それを片付けて洗濯物取り込んで畳んで
買い出しに行ってから庭の水やり草取り、
そんな事してる間に晩メシの準備して
お前らが寝た後にやっと繕い物だ」
「……お父さんがすっごく手伝ってるじゃん」
まぁ、この状況でご意見を下さるとは…。
見上げた度胸だ。
「俺の手伝いがありゃ楽にこなせるってんだな⁉︎
上等だ!じゃあ明日、
睦と同じことやってみろ!」
「…っ‼︎」
大声を上げた俺に、弥生も
無関係の睦月も震え上がった。
「疲れた身体ひきずってる相手に
労いの言葉は?」
「……」
「感謝の気持ちは!」
「………」
ひと言ぶつける度に縮んでいく弥生の身体。
睦が許したとしても
俺は許しはしねぇ。
「家族だと思って甘えてんじゃねぇよ。
感謝の気持ちをちゃんと持て!」
「………はい」
素直に返事をする辺り、
思い当たる節があるのだろう。
「それからなぁ」
一際、低くなった俺の声に
弥生はハッと目を見張った。
そう、この件に於いて
俺が1番気に食わねぇ事だ。
「俺の女に偉そうにすんじゃねぇよ」
弥生も睦月も、
信じられないものでも見るかのように
目を剥いていた。
何とでも言え。
どうとでも思え。
気に入らねぇモンは気に入らねぇ。
どこの誰だろうと
俺の睦を傷つけるヤツは許さねぇ。
睦を守るって覚悟は伊達じゃねぇんだ。
あー気に食わねぇ!