第34章 反抗期
それを嬉しいだなんて…。
「こんなこと言いたくないけど…
私たちに血の繋がりはないでしょう?
それまで、睦ちゃんは
素直ないい子で私たちに懐いてくれてたけど
どこかで遠慮してるんじゃないかって
ずっと思ってたんだ」
穏やかな笑顔。
おばちゃんはどこまでも優しく話す。
「遠慮なんか…」
「うん…でも私にはそう見えたんだよ。
だから、あぁやってイライラをぶつけてくれて
やっと私たちを信用してくれたのかなって
嬉しくなっちゃってねぇ」
ふふっと、その時を思い出すように笑った。
「怒りをぶつけるのって、
それなりに信頼してる人だからできるって
思うんだよ。悪い言い方だけど、
可愛く擦り寄るのは誰に対してもできるだろ?
ご機嫌を取るのにも使えるし、
やっぱり気を遣ってる証拠に見えてね…」
おばちゃんの心の内を
初めて知った。
私のあんな横柄な態度を
そんなふうに取ってくれるなんて…
「私おばちゃんみたいになりたい…」
母親の鑑だよ。
「あはは、何を言ってるの!」
「私、おばちゃんに育ててもらえてよかったな…」
ひどい闇に覆われた過去ごと払拭してくれた
おばちゃんとおじちゃんに
心から感謝した。
「そう言ってもらえてよかったよ。
それなら、睦ちゃんも
いっぱい愛してあげな?それだけで
弥生ちゃんは救われるはずだから」
「……うん」
私がおばちゃんから受けた愛を、
今度は弥生にも。
わかっている…
さっきおばちゃんから聞いたから。
でも、私はおばちゃんほど出来た親じゃない…
その時
遠くからドタドタという足音を響かせながら
「お母さん‼︎」
あぁ…キタ…。
理解不能お嬢…。
いやいや、私も同じだったんだから。
私が乗り越えるべき壁なのだ。
「なぁに?」
パシッと勢いよく開かれた襖。
小さい頃から、
廊下も襖も静かにって
あんなにしつけたつもりが…
どうしたことか。
「私の着物のシミ抜きしてくれてない!」
「あぁ…ごめんね。昨夜やるつもりだったのに
睦月の羽織りが裂けててそっち直したから…」
「私の方が先だったのに!」
「そうだね、ごめんなさい」