第34章 反抗期
「あはは、いいんだよ。
私も、一生懸命やってる睦ちゃんに
余計な事を言ったのが悪かったんだから」
おばちゃんは何でもない事のように
笑って言ってのけるけれど…
「違う違う…そんな事ない。
どう聞いても私が悪いよね…」
私の方はそうも行かない。
まさかの事態に、頭も心も落ち着かない…
「自分でもどうにもならない時期って
あるんだと思うよ?
誰もが通る道だし…。
そういう時期を経て、
立派な大人になれるんだから」
「……でも、」
「むしろそういう時期があるからこそ
ちゃんとした大人になれるんだってさ。
睦ちゃんもそうしてきたから
こんなにいいコに育ったろ?
だったら弥生ちゃんの事も
しっかり受け止めてあげないとね」
……
「…うん、そうだね」
そんな事でショックを受けている場合じゃないよ?
と、
暗に言われているような気になった。
実際、そう説かれたのだろう。
「だって、睦ちゃんは
自分のその時のこと、忘れてるだろ?」
「うん……なんとなくね、
そんな時期があったようには思うけど
そこまでひどい事を言ってたなんて
思ってなかった…」
ひどい話だ。
よくある、アレか?
やられた方は覚えているけど、
やった方は忘れてる、みたいな…。
あぁあ、自己嫌悪…
でも…
そうか…
そっかぁ、
私の可愛い『やいちゃん』も
大きくなっちゃったんだなぁ…
「そう、本人にとっては
それくらい一瞬の事なんだよ。
あんまり深く考えないで、
弥生ちゃんのいいようにさせてあげたら
いいんじゃないかしら」
「…そうだね…
でも、何か言うとすぐ怒るよ」
「ふふふ、睦ちゃんの方が
子どもみたいだねぇ」
「えぇ?だって…」
「…自分にも
そんな時期があったって知ってショック?」
おばちゃんは優しい笑顔で訊いた。
さすがおばちゃん…
私が、弥生の事じゃなく
自分の過去に打ちのめされている事に
瞬時に気づいてくれた。
「…うん。ごめんなさい…」
「謝る事じゃないよ?
私は、嬉しかったな…」
……
「嘘でしょ?そんなこと言われて
嬉しいはずないじゃない…!」
あんなの、可愛くないなぁって嫌な気分になるか
なんてこと言うのって落ち込むかどっちかだよ。