第33章 ゆめからの覚醒
「目が覚めないの。夢から醒めないの」
そうだ。
これはそんな感覚。
「なに、言ってんだ。お前が夢だってのか?」
「違う、私じゃなくて…」
恐る恐る、彼を見上げる。
それに気づいて、目を見開いた天元。
「……俺?」
あなたは、私が作り出したニセモノだ。
だから、私は何も感じない。
あなたがあなたじゃないからだ。
「夢でも、逢いたかったのよ…
だいすきなんだもん…」
「だいすきでも、ニセモノはいただけねぇなぁ?
ちっとくらい、我慢しろよ」
記憶を辿って、
あの人の面影をつないで
こんな事をしていたの?
私はもう、救いようのないばかだ。
「お前はバカじゃねぇ。
俺を愛するだけの、ただの女だろ?」
…私が、言わせているの?
「俺が言ってんの」
私の夢だよ、私の意識だよね…
「無意識だよ。もう、俺の行動なんか
睦に染み付いて、
本物もニセモノもおんなじようなモンだ」
だいすきだよ。
「お前のだいすきな俺は、もうすぐ帰るから。
睦の元へまっすぐに。
だから、お利口にしてろ」
もっとぎゅってして…
「…本物にしてもらえ。
俺じゃ、足りねぇだろう?」
でも…
「ホラ、目ェ醒ませ…」
起きられないの。
目を覚ましても、また夢の中なの…
いつまで経っても、夢の途中なんだよ…
「大丈夫…起こすのが本物なら…
お前はイヤでも引き寄せられていくから。
同じ俺なのに、俺じゃダメなのは
悲しいけどな」
ごめんなさい…
「こら、泣かせんのはイヤなんだよ。
早く、ほら…」
促されて、
私は瞬きをひとつ…
「悲しい夢でも、見てんのか…?」
優しい声。
ずっと聴きたかった。
あったかい掌。
私の心を動かす、唯一の温もり。
「睦?起きたのか…?
どした…淋しかったか?」
「…淋しかったよぅ」
「そうだな…ごめん」
布団に横になって寝ていた私の上に
上半身だけ投げ出して
寝てるうちから流していたであろう涙を
丁寧に拭ってくれる。
「もうどこも行かねぇから…」
外はすっかり明るくて
たったのひと晩を1人で過ごした私は
その淋しさを映したかのような
甘くて悲しい夢を見た。