第33章 ゆめからの覚醒
好きな筈。
愛してる筈なのに。
それなのに、…
何にも感じないの。
それが怖い。
さっきまで一緒にいたはずの、私の家。
そこまで手を繋いで歩いた時も
あの家で話した内容も
天元にされた事にも、何も感じない。
何も感じないってなに?
「睦?」
名前を呼ばれてもときめかない…
「なあ睦…!」
声を聴いても、。
だめだ。
私の気持ちはどこへ行っちゃったの?
どうしてこんな事になったの…?
もうイヤだ。
なにも考えたくないよ…
今まで、積み上げて来た2人の想いは?
ずっと描いていた、2人の未来は?
失くなってしまうの?
取り戻せないの…
終わってしまう…
「なんで…泣いてんだよお前」
信じられないものでも見た時みたいに
目を強く見開いてから
怒り、…ないし、悔しそうに顔を歪め
私を捕まえた。
「…っ、ちがう」
こんなの違う…
「泣くような何がある⁉︎」
「ちがうの…」
「お前を泣かせたくねぇのに…っ」
「ごめんなさいわからない…」
私を抱く腕に力が入った。
その先の言葉を、遮るようだった。
だから、余計に涙があふれてしまう。
「何が」
苛立ちを隠せない声。
それは私にでは無く、
おそらく自分に。
「ごめんなさい…」
「何が…!」
言葉にするのがいやだ。
認めてしまうのが怖い。
だけどそれをこの人は許さないから。
たすけて…
「なにも感じない…天元のこと、何も」
「………ど、ういう……は?」
「こうやって抱きしめられても、
声を聴いても目を見ても
…なにも、ないの、」
あぁ、認めてしまったの…
「お前…」
「大好きだよ、好きなの!でも、…」
……ずっと、おかしかった。
天元が、帰らないと言って、
ひとりでいたはずなのに
寝ようとしていた所へ突然帰ってきて、
…その時から私はおかしかったんだ。
一緒にいるのに、そうじゃないような感覚がした。
あの、安心できない感じ。
あんなの、この人と一緒の時には
感じた事なかったのに。
一緒に寝ていた筈が、
目を開けたら一瞬で違う場所にいたり、
意識が曖昧で…
「…目が、」
「睦、…目?」
天元は腕の力を緩めて
話を聞いてくれる体制。