第31章 ゆめのとちゅう
「…そんな事、よく恥ずかしげもなく言える。
本気に、…するけど、いい?」
「恥ずかしい事じゃねぇだろ。
つぅか、大真面目だからよ、
本気にしてもらわなきゃ困るな」
柱に絡み付かせていた私の腕を取り
自分の腰に回させると
天元は私の背中を大きく抱き込んで
ゆっくりと顔を寄せた。
それを受け入れると
少しだけ調子に乗った天元は
口づけの角度をきゅっと変えた。
甘く刻みつけるような…
ずっと委ねていたくなるような優しい口づけ。
唇全体を食べられているような感覚の中、
「睦…?」
そっと呼ばれて…
「…ん…」
小さく返事をしたのに、
「…睦、」
また呼んで…
「目、開けろ…」
…え…?
予想外の言葉に、
薄く目を開けてしまう。
でも何だか、
目を合わせてはいけないような気がして…
至近距離で
天元が私の目を見つめているのに
気がついていたけれど
目線を上げる事ができなかった…。
「睦」
ちゅっと唇を合わされて
強く求められているような気になる。
「こっち、…見ろ」
こんな事をしながら…?
仕方なく、言われた通りに
彼の目を見つめる。
すると、よく出来ましたと
また唇を食まれた。
思わず、目を閉じてしまった私に
「こら」
叱るような声が飛ぶ。
「…恥ずかし、の」
「お前とこんな事すんのは、俺だけだ、って
…ずっと、見ていて欲しい」
「?…天元、」
そんな事、初めて聞いた。
まるで私みたい…
不安でも、あるの?
「…ん、」
少し攻めたように合わさる唇…
今言われたように、
閉ざしてしまいたくなる視界を
がんばって繋ぐ。
私のために、
時間を…
すべてを割いてくれる彼に
私も応えたい。
見つめ合ったまま口づけなんて
初めてで、…
いつもこうしている時も、
私は目を閉じるけれど
もしかしたら天元は
こうして目を開けているのかな…
見られていたのかと思うと
ものすごく恥ずかしくて…
今だって、
私、どんな顔してる?
見ないで、ほしい…