第30章 秋の思い出
ホントのお団子も買ってもらったし、
人形焼に、今頬張っているたい焼きと
ちょっと季節外れのラムネに、
最初に買ってもらった飴細工。
本当に食べ物づくしだ。
おかげで私は幸せいっぱい。
天元には、手間を掛けさせているけれど…
「もう真っ白だ!」
柔らかく透明だった水飴が、
彼の手によってもう固まってきている。
「そろそろ食えるけど?…つうか
何で俺が練ってんだよ」
やっぱり解せない天元は文句を言っているけれど
それでも満更でもなさそうに
ねりねりし続けていた。
「天元がやってくれたら
より美味しいからだよ」
「まーウマイこと言いやがる」
ぷっと笑って天元は肘で私を突く。
「ふふ、だってほんとだもん」
突かれて離れた身体。
今度は私が
肩でとんっと彼を押した。
「それにしても見事に甘いモンばっかだなぁ。
うどんもおでんもあったけど?」
「もう手もお腹もいっぱいだよ。
…おばちゃんに見つかったら怒られちゃいそうだけど
今日は天元だからいいんだよ」
「はいはい…
今晩くらいどうって事ねぇや」
あぁ幸せ…
「あ、あれは何?」
「んー…射的」
「鉄砲で撃つの?」
「…コルク玉な」
「あぁ、びっくりした」
「撃ち落とせばもらえる」
「へぇ…」
歩きながら店先を通り過ぎる。
3段ある棚にたくさんの景品が並んでいた。
その中にある文化人形に釘付け。
だってネコなのだ。
人型の猫…。
振り返って見ている私に
「…やりてぇの?」
天元もお店を振り返る。
「違う違う!」
私は慌てて天元に向き直った。
だって私にできるワケがないし
珍しかったから見ていただけなのだ。
「でも欲しいモンがあった?」
「欲しいわけじゃないの。
ちょっと珍しかっただけ。
私にも作れないかなぁって思って…」
「……」
探るような目を向けてくる天元。
あわわ…
「見てよ、こんなに買ってもらったのよ?
もう充分すぎるくらいだよ」
「今日は、充分スギルなんて事ねぇんだよ。
無限にお前に与えてやりたいワケ」
私の腕を引いてそのお店まで戻る。
半ば引きずられている私は
「待って!天元は水飴練ってるじゃない」
「もう出来た。睦、食え」
割り箸を揃えて私に差し出した。