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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第30章 秋の思い出





私だって、ものすごく浮かれてるんだ。
譲るつもりはない。

「…参ったな」

「明日歩けなくなっても、
絶対に全部回るもん」

「こんな時にそうやって甘えんのかよ。
…しょうがねぇなぁ」

完全に弱りきった様子で
天元は私を見下ろしていたけれど

「わかった。俺がなんとかする。
向こうに日用品を売ってる見世が出てたはずだ。
そこまで戻れるか?
なんならお前の大好きな『抱っこ』して…」

「歩ける」

両腕を広げて私を待っている天元に
きっぱりとお断りをして
彼の腕に掴まりながら天元の言う見世まで戻った。




天元が買ったのは
1本のロウソクだった。
1本から売っている事に私は驚いた。

地面に直接布を敷き、
金物からお線香から…色々な日用品を
置いてあるその露店は
商店街の角の金物屋さんだった。
見知った人がそこにいて
なんだか不思議な気持ちだ。

私はその金物屋さんのおじさんを知っていたが
向こうは私を知らない。
故に会話をすることはなかったが
ここは金物だけでなく、
日用雑貨も売っているんだなぁと
なんとなく物色していた私に

「睦、おいで」

天元が声をかけ、手を引いて歩き出した。

連れて行かれたのは
参道から少し奥まった暗がり。
忘れられたかのような、
大きい石灯籠が置いてあり
足元は落ち葉だらけ、
人目を避けるような場所だった。

天元はその石灯籠に腰を預け

「ちょっとここにもたれとけ」

緩く投げ出した足の間に私を滑り込ませ
足の上にもたれろと言う。

「何をするの?」

「ん?下駄にちょっと細工をな」

そう言いながら
私の身体を自分の足に軽く乗せ
少し屈んで足元に手を伸ばした。

「片っぽでいいから貸しな」

「うん…」

何をするのかと見守っていると
鼻緒の裏にそのロウソクを塗り付けだした。

「…随分と傷んでるなぁ。
お前この下駄、気に入ってるもんな」

「うん、だって可愛いし…」

「志乃さんがくれたからだろ?」

「うん!
この間、鼻緒を直してもらったばかりなの」

「切れたのか」

丁寧にロウを塗り込んだ天元は、
それを地面に置いて履かせてくれた。
と、もう一方も手に取って
同じように鼻緒の裏にロウを塗り始める。

「切れた…」




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