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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第30章 秋の思い出





「そりゃいけねぇな。
何が何でも祭りを楽しまねぇと…」

大事な睦を
失くしたりしねぇように。

自分の中を渦巻く邪な想いを払拭すべく、
俺は睦の手を引いて走り出す。

「わぁっ!天元待って、速い…!」

突然走り出した俺に
必死でくらいつく睦もまた悪くねぇなと
煮えた事を考えながら。


















糸切り鋏のようなそれが、
パチンパチンと切り目を入れて
きゅうぅっと伸ばしたり
ピッとつまんだり…
丸みが出るように指先でならして
筆でちょちょいと目を描くと…

「見て天元!ねこねこ!すごい…!」

おじさんから受け取ったのは
なんとも見事な猫の形の飴。

「あぁ、猫だなぁ」

天元はにこにこと笑っている。

子どもっぽいとか何とか
自分で言ってたくせに、
そんなのもうどうでもよくなってしまった。

「すごいね!」

「おぉ、すげぇなぁ」

「上手だねぇ!」

「ははっ、上手だなぁ」

天元はもう笑うしかない様子。

しかも私の感動っぷりに
飴細工屋のおじさんが気を良くしたのか

「もうひとつ、何がいい?」

とにこにこで訊いてくれる。

「え?」

私はおじさんに言われたことの意味がわからず
天元に目線を滑らせた。

にこっと笑った天元は

「もう1コ作ってくれるってよ」

愛しむように私を見ている。
…あれ、私の保護者かな。
自分のはしゃぎっぷりと
天元の余裕ある態度の落差に
少し心配になる…

「もう1コ…?」

「そんなに喜んでもらえると
こっちも素直に嬉しくてなあ。
ちょうど客も途絶えたし
オマケでもうひとつ作るから
何がいいか言ってごらん?」

いいのかな?
と、天元を見ると、
いいんだよ、
と頷いてくれた。

私は何がいいか思考を巡らせて
何を作ってもらおうか
必死になって考えた…。





私が手に持つ2つの飴細工。
ひとつは大きめのねこ。
もうひとつは小ぶりの金魚。

「お前さぁ…」

可笑しそうに背を丸めて笑う天元は
でも少しだけ呆れたように私を見やった。

「な、なぁに?可愛いね、金魚!
食べるのもったいないなー」

誤魔化すように少し大きな声を上げる。



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