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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第30章 秋の思い出





「そっかぁ…もう…困ったな、」

彼のほっぺにおでこを擦り付けて
私はどうしたものかと考える。

心と躰がバラバラだ。

「ゆっくりなら、いいか?」

あぁ、あとひと押しされたら
簡単に転んでしまいそうと思っていた所なのに。

「…愛してるから」

きゅっとこちらを向いた彼が
私の眉間に唇を充てる。

好き、って、どうしようもないな…













カラコロと響く、心地いい下駄の音。

俺の贈った浴衣を身につけて
嬉しそうに弧を描く唇は艶のある紅色。

好いた女を自分の手で美しくするのは
まるで俺のものであると誇示しているようで
ひどく心地いい。

また嬉しそうで…
楽しみでたまらないのが伝わってくるから
こっちこそたまらなくなる。

繋いだ俺の手を緩く振って
きらきらと目を輝かせる睦は
待ちきれない子どものようだ。
果てしなく可愛い。
愛しい気持ちが溢れて止まりそうもない。

「天元天元、音が聞こえてくるよ!」

少しだけ歩調を早め、
飛び跳ねるようにして先を眺めやる。


「あぁ、そうだな」

「……何で笑ってるの?」

少し恥ずかしそうに眉を寄せて
俺を睨んだ。

「いや、…楽しそうだと思ってよ」

ツンとすまして
俺の隣には並んだ。

「…そう、だね。楽しみだもん」

「子どもっぽいなんて思わねぇよ?」

「思ってるじゃない‼︎」

頬を真っ赤にして喚く睦が可愛い。
童心にかえってもおかしくはない。
祭りだ夜店だなんて、
大人だって心躍るものだろう。

「素直な睦が好きなんだ。
そんなん気にしねぇでちゃんと楽しめよ」

俺が笑顔を向けると
安心したように表情をやわらげて

「…私ね、」

「んー?」

ふと遠い目をした睦。

なんだかイヤな予感がして、

「どうした」

慎重に訊いてみた。

「私、お祭りって知らないの」

——そんな気がしてた。

だからってこっちから訊くのも悪いような、
…余計な事はいいから、
ただ今日を楽しめばいいと思っていたんだ。

「だから、今日すごく嬉しいよ。ありがとう」

「まだ礼を言われるような事してねぇよ」

「だって私、こんなに嬉しいし」

「礼は全部終わってからしてもらいてぇなぁ」


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