第30章 秋の思い出
そうなんだ…。
じゃあ、。
「…天元、口づけ…したい」
今教わった通り、
して欲しい
と言わなかったのは
私のほんの意地。
それと
本当の気持ち。
だってしてもらうんじゃ、
愛が足りない気がするからね…?
私だって、天元を愛してる。
それをわかってほしいんだ。
少しだけ目を見開いてから、
フッと笑う。
優しい笑顔。
どれだけ見てきたかな。
この人の愛に胡座をかいていてはいけないって
何度も言い聞かせたのに
優しい天元は決まって私を甘やかすから
自分から甘えるヒマなんかなかったと思う。
…ほら、私のせいとばかりは
言えないんじゃないかな?
優しく触れる唇。
それが私を平気でダメにしていく。
骨抜きにされてしまう。
「睦?」
目を閉じて、ただ彼を感じている私に
天元が呼びかけた。
…ひどいのね天元。
こんなふうに、私を目覚めさせるの…?
自分で言ったくせに。
甘えてろって。
夢のような口づけから
まだ目覚めたくない私は
自分から彼の唇を求めた。
だって、もっとしていたい。
そばに…感じていたい。
ちゅっと、小さな口づけをやめない私に
少し驚いたのか、
私の肩に手をかける。
それでも引き離す事はせずに
私を受け入れてくれた。
あぁ、こういう事かなぁ…
相手を顧みず、
自分のしたいことを押し通してみる…って。
これが、甘えるってこと?
だとしたら、
勘違いしてしまいそうだよ。
自分勝手でわがままになってしまいそうで。
離れてはくっついてを
しつこく繰り返す口づけの合間。
少しだけ息を乱す私の背中をまさぐって、
たどり着いた帯に指をかける…。
…脱がす?
そう思って、くっと首の向きを変え
彼を見上げた。
それに気づいて、
少しだけ離れた天元が、
「着替え…させてやろうか…?」
色を含んだ声で問う。
…イヤ。
その思いを込めてかぶりを振るけれど
天元はシュッと、帯の結び目を引き抜いた。
「天元…!だ、…っ」
だめ、と…そう言うつもりだったのに。
きっちり、唇を塞がれて
続きは継げなくなる。
彼の両腕は私の背中。
「んん…!…っじぶんで、っ」