第28章 恋模様
「…うん」
私はさっき宇髄さんが座っていた場所まで戻り
写真のファイルを仕舞ってある
ローチェストを引き開けた。
びっしりと埋め尽くされた引き出し。
それに目を見張り、
「…全部?」
宇髄さんは呆然と呟く。
「はい。下の段も全部」
スッと迷いもなく手を伸ばし
そのひとつを手に取った。
1枚1枚、丁寧に見ていく宇髄さんを残し、
私はキッチンに戻る為立ち上がる。
「1番下の段だけは見ないで下さいね」
「んあぁ…」
返事半分。
あんまりじっくり見られるのは少し怖い。
でもちょっと嬉しい。
この人に褒められるのは好きだ。
キッチンに回り
食パンを2枚、まな板に並べていると、
「…なぁ睦」
宇髄さんが
写真から目を離さないまま
私を呼ぶ。
「はい」
「お前はさぁ…」
「…はい?」
勿体つけた言い方に身構える…
なに?
なんだろう。
ダメ出しか?
アラが見えたか。
でも、
宇髄さんが紡いだ言葉はそんなものではなくて…
「お前やっぱり、俺のこと好きな」
そんなとんちんかんな台詞だった。
私は耳を疑うばかりだ。
「…なんですか?」
「1番下の段には何が入ってるって?」
「あッ‼︎見たんじゃないでしょうね⁉︎」
「まだ見てねぇ」
「まだって何ですか!ダメですよ?」
「何でダメか言え」
「な、…何でもです!」
私はピザトーストを作る手を止め
キッチンを抜けた。
「もう他のも見なくてい、い……」
宇髄さんが見ていたファイルに入っていた写真を見て
さっきこの人が、
どうしてそんな事を言ったのかを理解した。
温室からの、隠し撮り…
1枚だけ紛れていたものを
そのまま仕舞ったのだ。
誰も見ないから、面倒だったしいいかと思って…
これだけ数ある中から、
偶然それを手に取る確率って…?
何の嫌がらせなのだろう。
「こんなんばっか撮ってるな?
さっきの暗室にも吊るしてあったな。
あの教室でも、温室でも。
構内を歩いてるのもあった。
お前1歩間違ったら犯罪だぞ」
……
「…そうです。…犯罪者です」
宇髄さんは、私を驚いた目で見上げ
「おいおい…」
泣きそうな顔を確認した途端、
慌てて腰を上げた。