第28章 恋模様
「大したものじゃありませんけど…
軽食程度…ピザトーストとか?」
「お前が作るなら何でもいい」
にっこり笑う宇髄さんから目を離さないようにして
そろそろと近づくと
彼の膝の上の写真の束をぱっと奪い取った。
「あー、もっと見せろよ」
「もういいんですよ。
人に見せるようなものじゃありませんから」
「いや、すげぇいい出来だった。
お前の目には、世界があぁ映ってるんだなぁ」
しみじみと言われて
私はつい彼に見入ってしまう。
褒められた…
私の写真。
この人に…。
天才画家に。
「お前模範生だろ」
「…模範生が学校サボると思います?」
「容認されてんだろ?」
「そんな事あるわけないじゃないですか」
「暗室見てい?」
「…はい?」
「暗室」
「いいですけど。何で急に…」
言ってるうちに宇髄さんは
とっとと立ち上がってもう1つのドアに向かった。
迷わずに向かったのは
それらしいものがそれしかなかったからだろう。
ガチャっとそこを開けて中を覗き込む……
「あ‼︎待って…⁉︎」
いや、もう遅い。
「あの機器はお前のか?」
…あれ?
私が懸念した事はスルーされたようだ。
宇髄さんが指差した先を覗き込み…
機器、と言えるものなんか
引き伸ばし機と…現像液なんかを入れるバット。
「…学校から借りてます」
「ほらな、お前優遇されてんの。
将来性があるって思われてるんだよ。
ありがたいねー」
感心したように言い、
宇髄さんは電気もつけずに部屋の中を見渡した。
暗いおかげで、
室内に吊るしてある余計なものは
よく見えなかったようで
私はホッと胸をなでおろす。
「だってお前の写真、いいもんな。
すげぇいい。入れるべき物が全部入ってんだよ。
それなのにちゃんと隙もあって…」
「ほんと?…そんなに?」
「そんなにだよ。…なんだ?
お前、誰にも褒められた事ねぇのか?」
「いえ…先生も、友達も褒めてくれる」
「そうだろうな。
…ん?じゃなんだよ、さっきの反応は」
「…誰に褒めてもらっても、
よく、わからなくて…」
ただ、良いとか悪いとか
そうじゃなくて
好きなんだ
写真を撮るのが。
私の…
心をうつすから。
「…他の写真、見てもいいか?」