第28章 恋模様
「…もしかして…宇髄さんが、描いたんですか?」
「んー…そうかもな」
「絶対そうですよね⁉︎すごい!
とっても可愛いです!私その絵大好きです。
宇髄さんやっぱりすごい」
贅沢な落書きだ。
センスある人が描くと
落書きもあんなに素敵になるのか…
私の感動っぷりに宇髄さんは苦笑いだ。
「いくら気に入ってもらえてもなぁ、
真意が伝わらねぇんじゃ意味ねぇわ」
「真意…?」
「俺がわざわざ、あの教室にお前を連れてって
この絵を見つけるように仕向けたんだよ。
まんまと見つけやがったってのに
お前はその意味に気づかねぇ」
「……意味があるんですか?
これから仲良くなる鳥じゃないんですか?」
「俺とお前だ」
がしゃんと、ガラス製のポットのフタが落ちた。
割れなくて良かったと冷静に考える一方で
どっくどくと鼓動が…耳元で鳴っている。
俺とお前?
あの絵が?
ボケっとしてる私を
宇髄さんが迎えに来るっていうの?
失礼じゃない?
そんな事より、何を描いてるんだ。
「そんなの…見つけるとは限らないのに…⁉︎
そんな事するよりも口で言ったり…それか
手紙を書いた方が手っ取り早いでしょ」
「手間がかかるから美味いんだろ?」
「…ぁ」
さっき私が言った事を模して
宇髄さんは嬉しそうに笑った。
「お前の言う通り、
手間かけたから美味い思いできた。
見つけてもらえて、理解されて
可愛い顔で照れたりとかして」
ぎゃあ!
「照れてないです」
ぷいっとそっぽを向き
顔を見せないように
動揺しながらも何とか新しく淹れたお茶のコップを
ずいっと差し出した。
「へぇ。それで照れてねぇってんなら
普段の姿も随分と可愛いんだなぁ」
それを受け取りながら、私を揶揄う。
1人で余裕ぶっこいてさ。
やり切れなくなった私は
距離を取ろうとテーブルに向かおうとして…
宇髄さんの膝の上に乗っている写真の束。
1番上のそれは…
「‼︎」
絶対にこの人には見られてはいけない1枚だ。
「どうした?」
私の目線を追って
見下ろそうとする宇髄さんを
「待って下さい!えぇと…お腹すいてませんか⁉︎」
私は苦し紛れとわかっていながら
白々しい提案をする。
思い通り、再びこちらを見上げた宇髄さんは
「作ってくれんのか?」
目をキラキラと輝かせた。