第28章 恋模様
「あ、…」
「え″?なん…何ですか⁉︎」
ほら、変な写真だった?
「見ないで下さいったら」
「鳥…」
「鳥?」
公園に行った時のかな。
木の枝に、ハトが座っていてこちらを見ていたから
ついシャッターを切った。
ハトなんか好きじゃないけれど
あのハトはなんだか可愛かった。
木の緑も濃くてきれいだったな。
「可愛いでしょう?こっち見てて」
「こっち見てる?いや、この鳥だ」
宇髄さんは、私の言った通り、
順番が狂わないように気をつけながら
1枚を私に向けた。
それはあの時、デザイン科の教室で見つけた
ピンクの鳥の絵を納めた写真。
「あぁ、それも可愛いですよね。
色までついて…あ、白黒になっちゃいましたけど」
私の写真はほぼ白黒フィルムだから。
勿体なかったな。
「今度はカラーで撮りたいな。
とってもきれいな色だったし」
「こいつは番なんだよ。1羽じゃだめだ」
宇髄さんはやけに真剣な目で言った。
「え?…あ、撮りましたよ、強そうな青い子も」
私の言葉に誘われて
宇髄さんは次の写真をめくった。
「…あぁ、そう。こいつ」
それを見つめて嬉しそうに笑っている。
…ちょっと、不思議な感じ。
「番なんですか?
その2羽、全然種類が違うと思うんですけど…」
「ん?」
「だって鳥って、同じ種で番になるでしょう?
ブルーの子は鷹みたいだし、
ピンクの子は文鳥みたいです。
どうしてそれが番ってわかるんですか?」
——こいつは番なんだよ。
…まるで決まっているかのような言い方だった。
「…違う国同士の人間でも結婚できるだろう。
鳥だって『鳥』って種族の中であれば
たとえ鷹と文鳥であっても
番になったっていいんじゃねぇの。
俺とお前だって、
同じ人間だってことを除けば後は全部違う。
髪の色も、顔も性格も身体の大きさも」
「……」
何が言いたいのか、いまいちわからない。
そんな私に宇髄さんは続ける。
「こいつは、自分の未来も分からずに
1人でただ待ってるんだ、何かが起こるのを」
宇髄さんが私に見せたのは
ピンクの文鳥の写真。
「待っている…」
「そ。で、こいつはその何かを起こしに行く所。
この文鳥に向かって飛んで行くんだ。
迎えに、行く」
彼が見ているのは、
ブルーの鷹の写真だろう。