第28章 恋模様
そう言われて、何が?と訊く程
私だって野暮じゃない。
この人の気持ちは、この間知らされた。
でもその話を長引かせるのは得策ではない。
「あの、何のご用でしたか?
私が行かなかったからですか?」
「ん、あぁ。また俺から逃げ出したかと思ってな」
まぁ心外なお言葉だ。
「逃げてません」
「今回はな」
そこまで言われて
私は繋がれたままだった手をパッと取り返す。
それにムッとした宇髄さんが
「何だよ」
私を睨んだ。
「何で手なんか繋いでるんですか」
「好きだからに決まってんだろ」
「好き、って、
…そんなに簡単に言えるものですか?」
どんどん猜疑心が強くなっていく。
もっと、大切なものだと思っていたんだ。
そんなにぽんぽん口に出すようなものじゃ
ないって私は思っていた。
「簡単じゃねぇよ。
でも言わなきゃ伝わらねぇだろ?
抱きしめた方が伝わるならそうするが
お前絶対ぇ嫌がるし。伝える事をやめて、
後悔するのだけは避けてぇんだよ」
「……そうですか」
後悔…。
その言葉がやけに頭に残った。
私はこのままだと、
後悔することになるのだろうか…
「なぁ、寝起きのとこ悪ィんだけどよ、」
「…はい…?」
私は色々考えながらの返事。
「なんか飲み物くれね?」
……
「あぁ、ごめんなさい。気づかなくて」
私は慌ててベッドから下り、
キッチンでお茶の準備を始めた。
「コーヒーはなくて申し訳ないんですが…」
かちゃかちゃと、
茶葉を出したりポットを出したり
忙しなく動く私を見て
「…水でもいいぞ?」
気を遣ってくれる。
いやいや、
「そんなわけには行きません。
緑茶、飲まれますか?」
「…あぁ。…葉っぱから淹れんのか」
「はい。お茶はちゃんと淹れます」
「手間かかんのに…」
「手間がかかるからおいしいんですよ。
よかったら飲み比べしてみます?」
「緑茶だろ?」
「全然違うんですよー?
浅蒸しの強火とか、深蒸しの弱火とか
全然味が違うんですから」
「…何のハナシ?」
「あんまり難しくはないけど長い話、
ききたいんですか?」
「…長ぇのは遠慮するわ」
「ですよね。とりあえず今日のは
深蒸しの強火です」
「…ソレだと何なんだ?」