第28章 恋模様
がんばった褒美は、
睦にもらう事にしようか。
…白いドアの前に立ち、
インターホンを押す。
……出てこねぇ。
寝てる、って事は無さそうだ。
出かけたか。
…風邪でもひいて高熱で倒れてたら⁉︎
「おい!」
どんっとドアを叩き
もう1度インターホンを鳴らした。
早く出てこい。
でなきゃカギぶっ壊して…
ドアノブに手をかけた瞬間、
ガチャ
っとカギのあく音がする。
ドアがひらく前に
こちら側から力任せに引き開くと
「っわぁ!」
ドアに睦がついて来た。
そりゃそうだ。
来客があれば、ドアを開けるのは家主の仕事。
まさか客側に開けられるとは
思いもしなかっただろう。
「宇髄さん…!」
あぁ睦だ!
「お前なにやってんだ」
元気そうだ。
倒れていなくてよかった。
部屋で干からびてたらどうしようかと思ったわ。
「なにって……」
言いかけて、何かに気がついた睦は、
「何しに来たんですか⁉︎」
パッと、ドアを俺から取り返す。
半分ほど閉められてしまったドアを
これ以上閉めさせまいとガッと掴んだ。
「何しにとはご挨拶だな、
倒れてやしねぇかと心配したってのに」
…倒れてるかどうかを心配したのは
ほんの数秒前からだがな。
「え?倒れてませんよ」
「それは知ってんだよ」
今知ったんだ。
「…ですよね。ありがとうございます。では」
「こらこら」
普通に俺を置き去りにしようとする睦。
俺はドアを押し開けた。
「…っち、力強すぎ!」
「自分の心配をして来て下さった俺様に
ありがとうの気持ちを込めて、
お茶でもいかがですかのひと言くらいあっても
バチは当たらねぇんじゃねぇの?」
「それ自分で言う事じゃありませんよね⁉︎」
「俺が言わなきゃお前絶対ぇ言わねぇだろうが」
「せめて来る前に連絡の1本でもしてくれたら
私だって喜んでご招待しますよ」
「ソレほんとだろうなぁ?」
「当然です!」
「じゃあ連絡先教えろや」
「………」
絶句する睦。
そう、俺たちは互いの連絡先すら知らないのだ。