第28章 恋模様
「なんで…」
宇髄さんのスケッチブックには
たくさんの私が描かれていた。
どのページを見ても私ばっかり。
軽いスケッチや
描き込んだデッサン、
色鉛筆で着色したもの…
今開いているのは
ページいっぱいに描かれた
笑顔の私…
「私、宇髄さんの前で
こんな顔して笑ったことない」
「…じゃ笑え」
「いや」
「嫌だぁ?」
「離して下さい」
平静を装うが、そんなわけはない。
どうしたらいいの、
こんな所でこんなふうにされて…。
大いに戸惑って
パニックになりそうになったその時…
「……っあぁあ、何で…
お前なんで見た⁉︎」
パニックを起こしたのは宇髄さんの方かも?
「いつでもスケッチできるよう
常に持ち歩いてたんだ。でもあん時
教室に置き忘れて…
何の因果か、それを甘露寺に見られて
揶揄われるし。
そんなん金輪際ごめんだと思って
持って帰ってしまい込めば
今度は本人に見られるって…」
私の肩に額を押し付けて
宇髄さんは顛末を事細かに曝した。
…
「何で…私?」
「何でとか言うのかよ」
「言いますよ…わけわからないもん」
「ンだよ、わかれ」
また無茶な事を言い、
宇髄さんはあろうことか、
私のほっぺたに唇を寄せたのだ。
「っうず、っ!何するんですか!」
「俺の気持ちに気づいたくせにシラ切るからだ」
……
それに関しては、…何も言えない。
あんな絵を描かれ、
こんな事をされ、
いくら私だってそうなのかも?と
思わないわけがない。
だけど、好きだと言われたわけでもない。
単に描きやすい顔だったという理由かもしれない。
いや、そんなワケないけれども…
それでもハヤトチリなんてごめんだ。
それこそ顔を合わせられなくなる。
「こっこんな事をしにきたんじゃありません」
「こんな事になっちまっただろうが。
お前が余計なモン見ちまうから」
「じゃあもっとちゃんと隠しといて下さいよ!」
「お前がここに来る予定はなかったんだよ」
「宇髄さんは何でもスマートにこなしますよね?」
「お前に関しては調子狂わされっぱなしなの」
宇髄さんは握っていた手を解放してくれた。
ホッとした途端、
くるりと身体を返されて
正面から抱きしめられ……
いやだ‼︎
「何をしてるんですか‼︎」