第5章 消息盈虚
押しつけるように合わさる唇は、
お互いの存在を確かめるには充分……
と思ったのは、私だけだったようで、
徐々に深いものへと変わっていく。
「…ん…」
久しぶりすぎて、逃げ腰の私を逃すまいと、
後頭部を大きな手で引き寄せられる。
朝の光と、
私たちの行動があまりにも伴わなくて、
私は少し戸惑うけれど
宇髄さんがここにいると、確かめたくて…
離れていた時間を取り戻したくて仕方ない。
口づけは止まないまま、
外にいた宇髄さんは草履を脱いで
縁側のヘリに足をかける。
ぐっと私の体は押され、一歩後ろへ下がった。
そうして、一歩一歩、部屋の中に侵入してくる宇髄さんに押される形で、同じように一歩ずつ後退しながら、彼を招き入れた。
「…っんん…」
どこまでも優しいけれど終わらない口づけに
息苦しさを感じ、
私は宇髄さんの胸を押し返す。
すると、それに気づいた宇髄さんが唇を離し
私を覗き込む。
「睦、好きだ。もう離れない。
なぁ睦、俺んとこ来い」
「…っ…え?」
意味をはかりかねて、
私が訊き返すと、
「あっ…あー…そうじゃねぇな…」
珍しく狼狽出した。
「俺は…お前に…あのな、それより話しが…」
仕切り直そうとしてる所悪いけど、
「それは、私のごはんを食べたいって事?」
「…は?」
言わせてもらおう、はっきりと。
「私ごはん、上手になりましたよ?」
「…」
宇髄さんは黙って、私を見下ろしている。
「毎日、私の作ったごはん食べてくれるんですよね?そしたら、宇髄さんは私の事、守ってくれるんでしょう?」
私が見上げると、
「お前…」
見開かれる目。
「消えそうだったんですけど…
急に、思い出したんです。
離れて、宇髄さんの事、
考えすぎちゃったからですかね?」
私は自分で笑ってしまった。
思い出すきっかけが、
離れていた事、だなんて。
でも宇髄さんは、笑ってくれなくて。
前触れもなく攫うように口づけをされ、
きつく抱きしめられた。
さっきまでのそれとは全く違う激しさに
私は膝から力が抜けてしまう。
咄嗟に、彼の着物を握り込むと
上から少しずつ、圧をかけられて、
私は畳の上に押し倒された。
「宇髄さ…」
上半身にのしかかられて、
ただ繰り返される口づけ。