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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第28章 恋模様





『大切すぎて、無くすのが怖くて、』

大切なのなら、つかまえておくべきだった。
もっと強く惹きつけておくべきだった。
匂わせておくべきだったんだ。

『もう少し様子を見て、』

…そんな余裕がどこにあった。
俺をここまで臆病にした睦は、
違う誰かとつき合ってるっていうのかよ。

ものすごい嫉妬が俺の中を渦巻いた。
こらえ切れない程のものだった。
風もねぇのに、俺の髪逆立ってるかもしれね。

嫉妬なんかする権利、臆病者の俺にはない。
様子見といいながら
竦んでしまったこの体。
何も行動を起こさなかったくせに、
口出しする資格はない…

でも…

卑怯者と呼ばれてもいい。
俺は睦が、ほしい。

こうならなければ動けない自分を恨んだ。



甘露寺と別れ、
エントランスを
外へと向かって歩いていく睦。
俺はその後を追い、
睦を追い越すと同時に
その小さな手を掴んだ。
そしてなんなら走り出す勢いで、
強引にぐいと引いた。

「宇髄さん…⁉︎」

明らかに戸惑いの声。
背中で聞いた俺は、
ただ無言のまま、歩き続けた。



ガチャっと、やや乱暴に開けたドアの鍵。
引き開けたドアの中に睦を押し込め
自分も入るとカチリと、鍵をかけた。

多少青ざめて見える睦は
こちらに怯えた視線を投げかけて

「……あ、の…私…」

何とか言葉を紡ごうとしている。

睦は玄関スペースに立ちすくみ
自分のバッグを抱きしめて、
真っ直ぐに俺を見る事もできずにいた。

怖がらせている…それはわかっていた。
不器用だろう睦に、
こんな時の対処法がわかるワケもねぇはず。

ただ俺としても、
無駄に怖がらせるのは趣味じゃねぇ。
諸々をこらえながら、

「悪ィないきなり。…」

何か伝えなければと思うが、
気の利いた言葉すら出てこねぇ。

突然、しかも強制的に連行されて
じゃあどうぞ上がってくれなんて
そんな事も言えなかった。

とりあえず、ここへ連れて来たことを
納得させる必要がある…

「…何度も…悪いが。
この間、礼をし損ねたから
やり直させてくんねぇか?
気にいるかどうかはわからねぇけど」




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