第28章 恋模様
「でも…」
「でもじゃねぇよ、辛気臭ぇなぁ。
シケたツラすんなって。
緊張感のカケラもねぇから
揶揄っただけだろ、もう俺が悪かったから」
座れ、と顎で差したその時、
「あー、宇髄さぁん!」
いかにも女の子ー、な声が聞こえてきた。
「…宇髄さんが女の子を泣かせてるっ」
「うぉお泣かせてねぇし!
睦、顔上げろよ。誤解される」
「……」
キツ目に言われて私は顔を上げる。
すると目に入ったのは
ピンクの髪にベレー帽をかぶった
可愛い女の子だった。
「どうしたの?いじめられたの?」
その子は大きな目を心配そうに揺らして
私の肩に手を置く。
「いじめてねぇっての!
この優しい俺様がンな事するわけねぇだろ」
「……」
宇髄さんの言葉などそっちのけで、
その女の子はじいっと
私の顔を眺めていた。
「………あの…、なん、でしょう…」
間近で、あんまりにも真剣に見てくるものだから
私は言葉を詰まらせながらも
何とか訊ねてみる。
「あらぁ…?」
「……?」
「私…、あなたの顔知ってるわ…」
いくら私が女とはいえ、
こんなに可愛い子にここまで見つめられると
照れてしまうな…
「…ごめんなさい…どこかでお会いしましたか?」
私が忘れているだけかと思い、
とりあえず謝罪を述べた。
「ううん、違うのよ…どこだったかしら、
うーんとねぇ…」
眉間にシワを寄せ、
キツく目を閉じて
「あぁっ‼︎わかったわぁ!
あなたスケッチブックの君だわ!」
ぱちっと開き切り、
ものすごい力で私の両頬を掴み上げた。
「はいアウトー!」
突然宇髄さんが大声で
彼女の話を遮った。
何事かと、私たちは宇髄さんを見下ろす。
「はい、後ろ見ろ甘露寺!
パフェのクリームがどろどろになりかけてるぞ!
早く食わねぇと!」
私たちの後ろを指差して
大仰に言い放つ宇髄さんにつられて
振り向くと
後ろのテーブルの上のイチゴパフェの
真っ白なクリームが、
どろーっと蕩けている所だった。
…いや、
イチゴパフェのほかにも
クリームあんみつのホイップと
チョコパフェのクリームも
ショートケーキもフルーツサンドも
マリトッツォも……!
テーブルいっぱいに広がるこのスイーツたちは…