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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第28章 恋模様





「お前メシ食ったの?」

メシなんて食ってる場合じゃない。
カッコウの被写体が目の前にいるのだから。

なんてことを言えるワケもなく、
黙ってかぶりを振る私を見て、

「持ってねぇの?」

辺りを見渡した。

「……持ってません」

「何でだよ。俺のやろうか?」

「いりません」

「いいから食え」

そう言ってさっきのベンチに戻るのは、
学科も学年も違うのに、
何故か私に構ってくれる宇髄さんです。


どういうわけか、
私の姿を見つけると声をかけてくれる。
いつも1人でいるからかな。
心配されてる?

対照的に、宇髄さんはいつも輪の中にいる。
驚くべきは
そのメンバーがいつも違うってこと。
誰とでも仲良く出来るんだなぁって
思ったのを覚えてる。


ある日ふらりと立ち寄った大学内のカフェテリア。
1人でスイーツを楽しんでいた私の耳に、
やけに賑やかな声が飛び込んできた。
少し離れたテーブルに
その集団はついていて、真ん中に彼はいて…

大きな口を開けて楽しそうに笑う声…
豪快でいて細やかな気配りができる姿に、
急激に心を持っていかれた。

あんなふうに振る舞えたら、
私も毎日がもっと楽しくなるのかな…

ふと、そんな事を思って、
余計な考えを払拭するように
ぷるぷると首を横に振る。

私とは違う世界だ。
一風変わった服装。
きっと、デザイン科の人たちだろうな。
しかも先輩…?
余計に違う世界。
私とは無縁の。


そう思っていたのに、
私が風に飛ばした1枚の写真を
その人が拾ってくれたのをきっかけに
私の世界が、彼とつながってしまったのだ。

別世界の人だったはずなのに。



「ほら、メシ。…っても、オニギリですけどね」

差し出された大きな手に、
それに見合った大きなおにぎり…。

「手作りですか?」

「ん?まぁ…」

宇髄さんは手の中のおにぎりを見下ろし、

「…でかいか」

私と見比べる。

おにぎりと大きさを比べられたのは
生まれて初めてだ。
アレと比べて、私は小さいと言う事だろう。
ちょっと複雑だ。

宇髄さんは私の前にしゃがみ込み、
おにぎりの包まっているラップを開いてから

「ほら」

何を思ったのか
そのおにぎりを私に向けて差し出したのだ。




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