第28章 恋模様
私は、
ひとつの景色を切り取る。
瞬間瞬間を、フレームにおさめるの。
その時にしかない景色を、
残しておくのがすきなのだ。
それは、景色も生き物も変わらない。
どれにも、その時にしかないカオがあるから。
月曜日の温室。
たくさんの植物に囲まれて、
私はまたカメラを構える。
天へ手を伸ばす木々の間に見える空が美しい。
地面から伸び上がる色とりどりの花たちも。
そして何より、この時間には必ず
彼がいるのだ。
灯台躑躅(ドウダンツツジ)の
間から見えるベンチに座り
お昼ご飯のおにぎりを頬張る。
いつもと同じ光景なのに、
私はまたレンズを向けた。
彼のこの姿を知るのは私だけだ。
この植木のおかげでバレずにすんでいる。
きっと、1人で過ごしたい時間なんだと思う。
でも私はこっそり知っている。
私の密かな、おたのしみ…。
だけど
バシャッとレンズが瞬きした直後。
彼がこちらをむいた、
ようなきがしたんだ。
やば…っ。
サッとその場にしゃがみ込み身を隠す。
…見つかっちゃったかな。
ドキドキする心を押さえ、
私は足元に見つけた雑草にカメラを向けた。
雑草とはいえ
薄青の綺麗な花だ。
シャッターを切ろうとした瞬間、
「睦」
突然名前を呼ばれた。
おかげでシャッターを切り損ねてしまう。
…恐る恐る振り向くと、
さっきまで
ベンチでおにぎりを食べていた人が立っていた。
「はぁい…」
仕方なく返事をすると、
私の手元を覗き込んだ彼は
「また撮ってんのか」
呆れたように笑う。
「…うん」
…彼を撮っていたこと、
バレてしまっただろうか…。
そんな心配をよそに、彼は
「毎日毎日飽きねぇな」
大きな欠伸をした。
おにぎりの後は、あのベンチで昼寝。
それが彼の日課のはず。
「睦、いつもここでソレやってんの?」
カメラを顎でさして尋ねられた。
…いつも、と言ってしまうのはどうだろう。
「んー…たまに」
「そっか。今度俺を撮れよ」
にっと笑う彼に、私はドキッとする。
「何で?」
「俺みたいな美形、撮り甲斐があるだろ?
何なら脱ぐし」
冗談かと思いきや、
シャツのボタンを外しにかかった。
「わぁあっ!やめてよ!」
「はぁ?冗談だし」
「冗談かい」
「たりめぇだろ」
呆れられた…