第27章 愛のカタチ
それを俺は、勢いに任せて
公衆の面前でキスなんかした。
逃げられて当然だ。
それでなくても、
不可抗力とはいえ
色んな女に声かけられまくって、
落ち込んでいるあいつにだ。
だけど、愛を伝えるには
1番手っ取り早いと思ったんだよ。
俺も気が立っていた。
せっかくの睦との時間なのに。
早く睦の元へ戻りたいのに。
だってこんなとこで声をかけてくる女なんて
俺の何を知ってんだ。
俺のダメなとこを知り尽くしてる睦でなきゃ
お相手はつとまらねぇ。
そうだよ、
俺のワガママにも、
自分勝手にも
ついでに性欲にも付き合ってくれるあいつでなきゃ
ムリに決まってる。
あーあ、ほらな、
だから家でおとなしくしときゃよかったのに…
何で俺は、あんな余計なこと言っちまったかな。
水族館に連れてってやるだなんて。
だけどなんだか、
最近つまらなそうにしていた。
一緒に暮らすようになって、
時間が経って、
最初はお互い新鮮だったのが
だんだん当たり前になっていって、
……
ちょっと普段と違うことをって、
思っちまったんだよ。
走って逃げ出した睦を探し
ひとり、水族館の中を歩き回る。
救いはやはり、狭いこと。
でっかいとこなら、探し切れるわけがない。
遠巻きに俺に視線を送る女も
声をかけてくる女も全て無視。
睦の手前、
女には丁寧に接する自分、を演じていたが
睦も見てねぇのに
そんなモン演じてやる必要はねぇ。
……あれ、もしかしてそれが余計だったのか…?
最悪だ。
…ああ最悪だ。
……
あぁああ最悪‼︎
せっかくのデートを台無しにした!
私は人目を避けた
大きな柱の影に隠れてしゃがみ込んで
後悔の渦に飲まれていた。
ここに来るまでの道すがら、
展示されている魚をぼんやりと眺めて来た。
歩いているうちに、
海の魚から淡水の生き物に変わっていって、
私の意識も
深い所から浮かび上がっていくような気がしていた。
そうしたら、
自分が何をしてしまったのかがはっきりしてきて…