第27章 愛のカタチ
「…目が据わってんぞ。
遅くなって悪かったな…」
天元は大きなため息をつき、
どさっとイスに腰を下ろした。
疲れた、と顔に書いてある。
「……」
黙っている私に、
「…どうした」
「…おっぱい」
「はぁ?」
「おっきいのが好き?」
「…何言ってんのお前?」
少し目を見開いて、
イスから背中を浮かせた。
ほんと、何言ってるの私。
でも…さっき
天元に声をかけた人たち全員に勝てるものなんて
悲しいかな、それくらいしかないんだ。
「いいから。好き?」
「はー…よくわからんが、
お前のなら好きだぞ」
天元は両肘をテーブルに付いて
掌をこちらに向けると
全部の指を曲げ伸ばしして
胸を揉むような仕草をした。
「好きなのね」
念を押すと、
「ちっさかろうがでっかかろうが
お前ならいいっつってんだよ。
アホ言ってねぇで早よ食え」
呆れたように言い放つ。
…私には大切な事なんだよ。
「モテモテでしたね、兄さん」
ポテトを1本つまんで、
天元の気持ちを探るように話題を変えた。
「あんなんモテてるうちに入るか」
吐き捨てるように言って
天元もポテトを1本口に放り込む。
「嬉しくないの?」
「何が嬉しいんだよ。
だいたい俺にはお前がいる」
ジロリと睨んでくるけれど、…
気づいてるのかな、
今だってみんな天元を見てるよ?
ついでに私まで、
まるで品定めでもされているような視線を
浴びせられている。
「…でもきれいなお姉さんばっかりだった」
「それはそうかもな。
みんなきれいにしてた。でも
俺はお前が1番だと思ってる」
ポイポイとポテトを頬張る天元は
さほど興味なさそうに言った。
「オトナっぽいし、
天元にはああいう人がお似合いだよ」
私の言葉に天元は、ふと手を止めた。
「…何が言いたい」
少しだけ低くなった声。
あぁ今、機嫌が…悪くなった。
「だってすごく似合ってた。
…キレイ目な服着て、
キレイ系のお化粧してるお姉さん。
私なんかじゃ、見劣りする…
天元の価値まで落としちゃいそうだよ」
どん‼︎
と、天元の拳がテーブルに落ちた。
大きな音に、私も周りのお客さんも驚いて
一斉に天元を見つめた。