第27章 愛のカタチ
「イルカにエサやれるってさ、
お前どうせやりたいだろ?そーいうの」
「えー、どうせやりたい!」
「だろうな、チケット買っとくか?」
と、天元が言った直後。
ぐぅ、と私のお腹が大きな音を立てた。
「「……」」
2人して私のお腹を見つめ…
「ぶっ…くくく、こりゃイルカより先に
睦にエサやらなきゃな」
天元は空いた手で私の頭をくしゃっと撫でる。
「あはは!ひどい!だってもうお昼過ぎてるし」
私は片方の手で天元の肩をぺしっと叩いた。
と、その途端、
何ともタイミングよく
ぐうぅっ
と、今度は天元のお腹が鳴る。
「「…………」」
驚いて顔を見合わせ…
「「ぷっ」」
同時に吹き出してしまった。
「あははは!ヒトのこと言えないじゃん!」
「そりゃお前でも腹減ってんだから、
俺なんかもっとに決まってんだろ」
2人で大笑いをしながら
向かうはフードコートだ。
時間はお昼すぎ。
ちょうど混んでるところかも?
そんな事を考えながら
天元に手を引かれた私は
安心して行き先を預けるのだった。
土曜日という事で、子ども連れも多い。
お昼時のフードコートはほぼ満席で、
でもちょうどよく、窓際の奥の席が空いていたので
私たちはそこへとついた。
「テキトーに買ってきていいか?」
私がカバンを下ろした時、
天元がサラッとそんな事を言った。
「え?一緒に行くよ」
もともとそのつもりだったから。
「いいよ、そこ座っとけ。
お前は場所取り係。ちゃんとそこにいろよ、
動くなよ?」
「…子どもじゃないんだから」
なんて言われようだ。
それでも天元は大真面目に、
「ちっせぇからなぁ。
あ、見えませんでしたーなんて、
ヨソに横取りされないように」
失礼極まりないことを
何とも無さげに言ってのける。
「そんなちっさくないよ!」
半分本気で怒って見せると
あははと楽しげに笑いながら
食券を買いに行ってしまった。
しばらくその背中を見つめていたけれど、
イスにすとんと腰を下ろすと
窓から望む海に目を奪われた。
晴れた空を映した真っ青な海は
高く昇る太陽を反射して
キラキラ光り、それは美しかった。
真下に目をやると
広いプールにイルカが泳いでいる。
アレにエサをやれるのかな…
あ、でもチケット買ってないや。
私のエサが先だったから。