第27章 愛のカタチ
「そうなのか?あのカフェ、
お前の好きそうなケーキもあったぞ」
「いい…」
「標本のみやげもあったし」
「欲しいけどいらない、もう行く!」
掴まれた手をぐいと引く。
私から握る気にはならないや。
あんまり引き止めようとするから
苛立っているのを隠さずに声を荒げると
いつもの気まぐれだと思ったのか
「欲しいんか…」
それだけ呟き、私を追い越した。
そして私の要望通り、その会場を後にした。
車に乗り込んでからも、気分は晴れない。
怒ってるんじゃないんだよ?
何だか落ち込むの。
いやーな気がするんだ。
それが、天元に伝わらないわけもなく。
「睦、ほら」
水族館に向けてハンドルを握る天元が
前方から目を離さずに
何かを持った手を差し出した。
条件反射で受け皿にした私の両手に
掌サイズの紙袋。
「やる」
顔はこちらに、目は前方に向けたまま
天元がにこっと笑った。
「……」
私はそれをジッと眺めるだけで
動けなかった。
もしかして、と、
思うところがあったからだ。
「…開けろよ」
紙袋から天元に視線を移すと
片手をハンドルから離し
「なんか知らねぇが、機嫌直せよ。な?」
私の頭をポンと撫でる。
「……天元…」
「んー」
信号は青。
道なりにゆるくカーブする道に車を走らせて
天元は軽い返事をした。
「…だいすき」
「んぁ?」
マヌケな反応。
それだけで、ちょっと気分がアガる。
「ありがと」
「あぁ」
口の端をキュッと上げる。
「ごめんね、機嫌が悪いんじゃないの…」
あんまり詳しく話したくなくて
しゅんと肩を落とす私の様子に、
「わかったわかった。
色々あんだろ?
俺はお前が笑ってりゃそれでいいの」
「うん……コレ、開けてい?」
「どーぞどーぞ」
楽しそうに笑う天元。
thank youの文字が並ぶテープを剥がし、
小さな袋を開けて逆さにした。
ころんと出て来たのは、
さっき私が欲しいと言った
透明標本のキーホルダーだった。
「すっごく綺麗…!」
すぐさま日に透かしそれを眺める。
「それも展示してあったぞ」
「えぇっ⁉︎見てない!」
「そりゃそうだろ、ソレ最後の方だったからな。
お前途中でもういいなんて言うからよ」