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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第27章 愛のカタチ





入れ替わり立ち替わり、
何の用事があって
あんなに色んな人とお話をする事があるだろう?

標本はさておき、
私はそちらに気を取られ、
一応見るフリをしながら
そそっとそちらに近寄ってみる。

と、

「LINEだけでも交換してもらえませんか」

はっきり聴こえるそんなひと言。
…あぁ、聞かなきゃよかった。

私はそのまま、そろそろと引き返し、
何もなかったフリをして
さっきのルートへ戻った。

戻ったはいいが、
ちっっとも見ている気がしない。
さっきのが気になって気になって。
心臓が嫌な音を立てる。
どうしようもないってわかってるけど、
…いや、

私の彼氏は、素敵だっていう証拠。
そう思おう。

そう気を取り直した私のそばに、
パーカのポッケに両手を突っ込んで、
少し背を丸めた天元が
つまらなそうな顔で戻って来た。

「おー、今度はなんだ、タイ?」

「…どこ行ってたの?」

知らないフリを決め込んで
私は天元を振り返る。

「なぁんもしてねぇよ?
…喉乾かね?
向こうにカフェあったぞ」

天元は私の手を取ってそちらに足を向けた。

…私はどこに行っていたかと訊いたんだよ。
何してたかなんて答えられても困る。
隠し事された感が増したんですけど…。
あーあ…

くるりと体を返した形になった私の目の端に
さっき天元に声をかけていたお姉さんが映る。
こちらを、窺っているような気がして…

クッと足を止めた私に驚いてパッと振り返る。

「どうした」

「…行きたくない。水族館がいい…」

だってあの人見てるし…

私が急に俯いてしまったので、
息を飲んだ天元が

「なんか、あったか?」

髪をするりと撫でて
不思議そうに私の様子を窺ってきた。

「なにも無いけど…」

「まだ全部見てねぇだろう?」

私のいた場所がまだ中ほどだったのを振り返って

「ゆっくりしても、
まだ水族館ぜんぶ回れるだけの時間はあるぞ」

私が次の心配をしていると思っているようだった。
もちろん、
そんな事を思っているわけではないので、

「いい。もう行きたい…」

私は首を振った。


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