第28章 26.
怪人を感知し、移動中に携帯が鳴る。
とりあえず電話に出る為ビルの屋上に止まってすぐ電話に出た。
『もしもし?ハルカですが』
「風雷暴のハルカさんですね?協会の者ですが、今お電話大丈夫でしょうか?」
特に戦闘中でもないし、大丈夫と伝えれば電話の向こうの協会の人は本題へと移る。
ビルの屋上なので街よりは静か。けれども風は少し強い。しっかりと耳を押し付けて話を聞いていた。
「──ですので、人間怪人ガロウについては風雷暴さんも気を付けてください。なるべくは1人で居ない事が協会からの望みであるので、活動の際は是非協会に連絡を。
単独行動でしたらGPSを絶対に切らないでください。遭遇したら他のヒーローや協会に報告をお願いします」
『わかりました』
「では、お気を付けて下さい」
通話が切れる。
世間では今、一般人ではなくヒーローを狩る者が居るらしい。それも分析すればA級ランカーを狙う傾向にあると。
現在A級5位に上り詰めた私だけれど、はっきり言ってA級ヒーローの中で目立っている。助けた雑誌関係者がメディア全般に関係している訳ではないが、私の意思関係なく。
もちろん、メディア関係ではアマイマスクには負けるし、むしろそういう目立つ面では負けたいのだけれど。
目立つからにはその人間怪人ガロウってやつに狙われる可能性が高いという。
『けど、家に籠もってるのも誰かに付き添われるのもやりにくいなー…』
なびく髪を抑える手を、高鳴る胸に移動させる。
協会の者が言っていた。ガロウは、A級だけ狙うとは限らない。S級も狩っていくだろうと。…S級が1人、やられたと。
そういえば連絡先教えてくれたっけ。せっかくだからと電話を掛けてみようとするが、何コールも待たされた後に聞こえるのは、ゾンビマン本人ではなく電話に出る事が出来ませんというアナウンス。
『……やられてないだろうな、S級ヒーローのゾンビマンさんよー…』
私の呟いた言葉は風に流され、誰の耳にも届けぬまま消えていった。