第27章 25.
「先生、あまりハルカを甘やかしちゃいけません。ハルカ、どんな事情があろうとも遅くなるなら連絡をしろ」
「白菜貰っちゃったし良いだろジェノス。でもよ、ハルカ。遅くなりそうってなったら連絡はちゃんと入れるんだぞ?」
「怪我もしているし、何処かで倒れているかもしれない。そう心配したんだぞ」
お盆に食器を乗せてテーブルに来たジェノス。
私も手伝わなくては、とキッチンを見て立ち上がる。
「余計な怪我が増えるから怪我人は座っていろ!」
ややキレ気味に肩を押されて再び座る事になってしまった。
しかし、手伝わないのも…。
心配してるのかもしれないけれども、結局はジェノスも私を甘やかしては……、あれ。
これは私の望むとある形のようだ。そう思えてきたのは何故だろうか?
まるでジェノスは世間で言う母親の様に家事をし、色々と世話をしてくれる。サイタマは時に叱り、優しく励ます。まるで父親のように。
そうか、そうなのか。血は繋がって居ないし、年も性別も名前だって違うけれども。
『そっか……うん、これが両親っていうやつか……!』
私の中で柔らかくなった何か。
サイタマとジェノスは驚いた表情で固まり、間を開けてサイタマが口を開く。
「えっと、うん。ハルカの言う両親?俺等の事じゃねーよな?俺もジェノスも男なんだけど……ちなみにどっちが母親だ?」
実際に親とは思っていないけれど(聞いたところ2人とも年齢が近いし)私が感じた事を言えばサイタマはなんだそれ、とおかしそうに腹を抱えて笑う。ジェノスは顔を少ししかめて「お前によそりたくは無いが怪我人にさせるわけにはいかないから仕方なくよそってやる」とご飯を沢山盛ってくれた。
そんな2人に釣られてなのか。私の頬が痛く、視界がうっすら滲んだのは。
3人で賑やかなこの部屋。明るい部屋から暗転するように、この夜、人間怪人の本格的な"ヒーロー狩り"がスタートした。