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風雷暴見聞録

第4章 2.


ブルブルと寒さに体を震えさせながら、人の居ない川から上がる。
見える汚れは綺麗に落ちたが、見えない汚れは未だに落ちやしない。冷たさで鳥肌が立った。
入浴・洗濯。温かい日差しが出ている内にそれらを済ませて周りに人が居ないので大きな岩の上に乗って、全裸で日光を浴びた。

私だって一応文明人だってのに……ウホウホ言ってた頃の人間かよ。時々そう思う。
シャワーや風呂を使いたい時は、助けた人や質の良いオルゴール等を直した人の家で使わせて貰う事もあったが…流石に毎日借りたら図々しいだろう。かといって入らないのは清潔ではない。そう思ってこうやってしのいでいた。
毎日が野生児な訳じゃあないし、家庭の水道水よりももっと冷たい川に好きで入ってる訳でもない。


──もう、慣れた。

ぽかぽかとした太陽の暖かみを全身で感じながら、私は過去を思い出す。

そう……孤児院に居た時は温かくて、養子として必要になれば何れはバラバラになる友達もいて。それだけで満たされていたんだ。
私の古い記憶の中では、肉親というものを知らなかった。両親の愛も尊敬し合える兄弟も知らない。物心ついた頃には既に親が居なかったのだ。いつ私が生まれたのか?要らなくなって捨てられたのか、怪人に家族を殺されたかも知らない。
そんな孤児院暮らしで、私はとても明るくお転婆だった。よく孤児院を抜け出して草原で遊んだりもした。
……そして、嵐の日、草原で私は雷に打たれて瀕死状態になる。赤黒く酷い見た目となり、全身を包帯で巻いた。絶望した。他の子とは違う、醜い烙印を残してしまったからだ。母と呼ばれる、孤児院の管理者も友達も私には寄り付かなくなった。
孤独の日々が続く中で、私は声を掛けられた。


"雷に打たれても生きていたっていうのは君かい?"

久しぶりの、私にだけに向けて掛けられた言葉。声色は落ち着き、優しかった事を覚えている。
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