第23章 21.
家に近付くと、今日は何やら騒がしい様だ。
なんか離れた所でジェノスはドンパチ戦ってるし、部屋がある辺りでは誰かの叫ぶ声。悲鳴ではなく、出てこい!とかそういった声だ。
いざ部屋に近付けば黒尽くめの3人組がサイタマの部屋に集っている。サイタマは貧乏だとは知っていたが…闇金とやらに手を出していたのか。私は闇金に返すレベルの金は持ってないからな、頼りにされたくはないな。
哀れみの視線を送っていると、2人ほどが宙を舞った。正確にはサイタマに殴り込もうとした2人がサイタマの一撃で飛んだ。この様子じゃ闇金とかそんなものじゃなさそうだ。
「…え?」
黒いドレスの女の声が驚いた様な声色で、吹っ飛んだ2人を目で追っていた。
吹っ飛んだ2人はドシャ、と地面に転がる。
「お前それじゃ生き残れねーぞ、フブキ」
サイタマとフブキと呼ばれた女の視線が私に向かう。
サイタマの顔は真剣そのものだったけれど、私を見たとたんけろりといつもの気の抜けた表情になった。
「お、ハルカおかえり」
『ん、ただいま』
片手を上げて挨拶するサイタマに片手を上げて私もサイタマに返す。
静かな空間はここだけで、離れた場所からは戦闘音が聞こえる。サイタマはうるさいなどと気にならないのだろうか?
「(確かこの女…今A級で騒がれている奴…!?なぜB級のコイツと親しそうに…?)」
じっと見られていたのでサイタマに視線を移すと、眉が困ったと言わんばかりの動きで下がる。なんというか、うん。この空気は居心地が悪い。
私は頭をかいてフブキと呼ばれた者にペコリと軽く頭を下げ、サイタマの部屋に入る事にした。
…とはいっても、あの険悪な雰囲気。玄関に入ったのは良いが、私は靴は脱がず。背後の音が気になった。
人の戦闘に興味が湧いてきた私はそのままドアを開け、様子を見守る事にした。
先ほど居た場所から少しずつ離れていて、互いの会話は聞こえにくい。それでも戦闘は見る事は出来る。玄関から出て壁に寄りかかりながら見物する事にした。
─なるほど。
フブキは辺りの小石を浮遊させ、サイタマへとぶつける。まるで嵐のように、小石の動きは所々不規則な部分はあるが纏まって押し寄せる。
サイタマはどうだろう。先ほど居た場所からフブキの後ろに移動していた。速くて見えない動きだったのだろう、動くサイタマは捉える事が出来なかった。