第22章 20.
──サイタマの部屋
「や、やべぇ…!間違えてキングのセーブデータに上書き保存しちゃったよ」
この前、知り合ったS級ランクに在籍するキング。彼の部屋から黙って持ってきたゲームにサイタマは上書き保存をしていた。
ジェノスもハルカも、持ち主であるキングも居ない部屋で1人、「勝手にあいつの部屋から持ってきたうえにデータ消しちゃったよ…まあいいか……よくねぇよな、やべぇ…」と自問自答している。
キングとは知り合ってからちょくちょく遊ぶ仲だ。キング自体戦闘能力は無いのだが、運が良いのか悪いのか、強い怪人と遭遇し、いつの間にか誰かが倒してくれていた…その内、自分が戦っていた訳でも無いのに、いつの間にかS級ヒーローに認定され、今に至る。
その数ある怪人との遭遇に、サイタマに助けられた事もあるのか、キングにとってもサイタマは自分を良く知る人の1人として安心して接する事が出来るのだ。
…いや、キングは戦闘能力は無いのだが、ゲーム内での戦闘能力はずば抜けていた。その腕はゲームの大会で優勝してしまうほどである。
そんな彼のデータが消えるというのだ。サイタマは内心焦り、なんて説明しようか心の中で考え始めた。
****
「わ、わああああああっっ!」
叫ぶ男性。いや、あの人は確か…。
人型のサボテンが男性に近付く。周りにはトゲが刺さって呻く人や血を流す人。
人型のサボテンがノシノシと歩く。己の棘同士が擦れて、キシキシと甲高い音が聞こえる。棘は丈夫なのだろう、擦れたくらいでは折れず、鋭利な針は光に当たり、殺傷能力を主張していた。
「さあ、お前もトゲのあるニンゲンになれ!」
怪我をしていない人間を狙って居るのか、棘が刺さり怪我した人よりも健康そうな市民へと歩を進めているようだ。
私は民家の屋根を蹴り、尻餅をついた男性の前に飛び降りた。
怪人は驚いて半歩下がる。丁度良い。
「なんだお前は。"サボテンマン"を邪魔するヒーローか?」
『そうだよ。お前を狩るヒーロー、私の名はハルカ』