第21章 19.
Z市以外も廻るし、時には力を集中して怪人の居る方向を目指して走り回った。こそこそしなくていいから、屋根から屋根へ、風神の力で飛び移り、駆け回れた。
門限は5時でも、空腹を感じて家に帰ればお昼を食べる事が出来たし、協会に入るからと通帳を作ったおかげで今までに見た事のない額が入り続けている事も確認した。思わず2度見と凝視をしてしまった。それだけ毎日駆除していたのか。
……そういえば、部屋を貰ったのだけれども、基本的に寝る時だけ部屋に帰れとジェノスに言われたな。ぼんやりと考える時間は減って会話をする機会が増えたのは良い事だとは思うが。
しばらく考え事をしているうちに、ヒーロー協会の車がやってくる。さっき倒した触手の怪人を処理するためだろう、普通車の後に大型の車が着いてきているのを確認した。
もうこの場に留まる理由もないか、と思いサイタマにやられたように、助けた女の子の頭を撫で、私はその場を飛び去る。
ビルの天辺で次は何処へ行こうかと検討していると、携帯が鳴った。電話かと思ったらメールの様だ。心地よい風が吹く。ビルの屋上でしゃがみこみ、少し不慣れではあるけれど指先でぽちぽちと操作をして本文の確認に入る。
"テレビや新聞にお前について取り上げているから連絡させてもらった。きちんとヒーローとして活躍
してるようだな。関心した"
"順位も上がってるみたいだし、いつかは俺とお前、コンビを組んで戦うのも悪くない。そのうち飯にでも行こう、奢るぜ"