第19章 17.
青年に教えて貰った通り、直ぐ近くのむなげやに到着した。5時半になる2分前、ギリギリだ。
入り口で丁度カゴを持ったジェノスと、チラシを握ったサイタマに会う。
「お、お疲れさん」
口元でニッと笑うサイタマ。
ジェノスは何も言わず、じっと見ている。
『な、なんだジェノス…?』
「いや、ここからでも十分お前の戦いは見る事が出来たのだが…。音速のソニック(笑)と知り合いだったのか?」
『とんそくのソニック?』
「音速の、だ」
音速のソニック……?
聞いた事も無いし、少し残念なネーミングだ。密やかに相棒である銃に"メサイア"という名前を付けていた私のセンスの方が断然良いだろうとさえ思えてきた。
長い長袖とか頭痛が痛いとかそういった類だろう、音速のソニックとは。
『いや、そんなネーミングセンス皆無の者なんか知り合いに居ないが、』
「お前が先ほど話していた奴だ」
『ん?あの青年か?』
先ほど?考えてみると、話したのはただ1人。あの刀を携えた黒尽くめの青年だ。確か…目元にペイントを施していた。
むなげやの場所を聞いた事と、間近で見た外見を伝えるとジェノスは苦虫を噛んだような顔をした。
「そいつが音速のソニックだ。勝手にサイタマ先生を好敵手だと宣言している、変質者だ。前に全裸で徘徊したり街中で暴れ回ったりしていた…お前も気を付けろ」
『全裸で徘徊したり街中で(全裸で)暴れまわる…それはまごうことなき変質者だな…』
迷惑掛けてるやつじゃないか。
サイタマがそのいい方だとただの変態だろ、とジェノスにつっこむ。私からしたらただの変態には違い無いんだが。
『分かった。これからは音速のパッ…ソニックに気を付ける事にしよう』
「パニックに目をつけられるとどこまでもストーカーされるから、お前も目をつけられないようにな」
『ああ、パニックを見つけ次第警戒って事だな』
何処かでくしゃみが聞こえた気がしたが、サイタマの買い物するぞー、というかけ声で私もカゴを持って店内に入る事にした。