第18章 16.
はしゃぐ市民の数人が、任せてください!と携帯を取りだし救助要請をし始める。その様子を見て、そういえば私も携帯を渡されていたんだっけかと思い出した。
私は近くにいたヒーロー仲間と思われる者に目をやった。腕が変な方向に曲がっている…骨折か。しばらくはヒーロー活動が出来ないだろう。
確か…C級は1週間活動しないと除籍するらしい。怪我の期間はカウントされなければ良いんだが、怪我を理由に除籍されるのだったら、無念だな。
携帯を見れば5時を過ぎていた。そう言えば、むなげやというスーパーに待ち合わせだと言っていたか…
はしゃぐ人々に話し掛けるよりも、ポケットに手を突っ込んでただ立っている冷静そうな青年を見付け、落ちたベルトを拾いがてら近付いた。
『すまないが、この辺にむなげやというスーパーがあると聞いたんだが…あんた場所が分かるか?』
少し目を見開き、話し掛けられたのが意外そうな表情だ。
身なりは何処にでも居そうな…と言いたいが、目つきは鋭く、腰回りに刀やその他武装済みでもしかしたらヒーロー関係かも知れない、とこの時は思った。
「ああ、こっちの方大体100m程行って左の店だ」
青年が指差す先に視線をやる。スーパーらしきものが小さく見える…
成る程、確かに近い…
ん?という事はサイタマは私がここに来る事を分かっていたのか。
『ああ、有難う……?』
お礼を言い、もう一度青年が居たであろう隣を見ると青年は既に居ない。周りを見ても他の黒い格好の他の姿はあっても青年は居なかった。