第17章 15.
繰り返し言うと、元の試食番組に変わる。画面上にはZ市の警報がテロップとして流れ続けた。
Z市か。私が今居るZ市は大きいが、この警報が出ているのはどの辺りなのだろうか?近くなら私が行きたいものだ。
相棒を組み立て、ズボンのポケットに突っ込んだ。やっぱりいつもの服が良い…私服は乾いただろうし着替えてくるか、と私は立ち上がった。
「なんだ?ハルカ行くの?」
テレビと私を交互に見てサイタマが言う。
はっきり行くと言えば良いのだろうか?けれども私は少しばかり張り切ってるような出しゃばってるような事を言うのが恥ずかしかった。
『少し散歩に出かけてこようと』
Z市は広いと聞いてるからな、と付け足して中身の無くなったマグカップを下げた。
玄関に向かう私の背に、サイタマの声が掛けられる。
「確か近かったな……
じゃ、5時半にむなげやってスーパーの入り口で待ち合わせな!絶対来いよ!」
努力はする、と伝えて自室へ。私服に着替えて、帯に銃。携帯も持った。
携帯の時計には4時20分。私は外に出て軽く跳び上がり、朝の様に私達の住む建物の屋上に立った。
さて。
天を仰ぐ様に両手を開き、掌から風を少しずつ起こし始める。
『(今、Z市で暴れている怪人は何処に居る…?)』
起こした風は髪を靡かせ、頬を撫で、暫くぴゅうぴゅうとなったあとに私を導く。
方向を知り、私は屋上のコンクリートを蹴った。
低い建物の民家、中小企業のビル。残った建物のそれぞれの屋根及び屋上を蹴り、目的地まで走っていく。
胸が躍る。怪人と退治する時、いつもそうだ。本当に私は怪人じゃないのか?と思う時もある程、戦うという事が好きな気がした。
ただ、怪人かヒーローかを区別するには戦う相手による…と私は思う。
そんなのはただの決めつけかも知れないが、一般市民を襲うという思考は微塵にもない。だから私はこっち側なのだと自分に言い聞かせて、目的地まで移動した。