第17章 15.
「起きろ、おい…起きろ…ハルカ……おい!起・き・ろ!」
肩を揺さぶられ、眠りに着いていた私は目を覚ました。
ぎゅっと手に握っていたタオルは私の体温で温かくなっている。そうだ、泣き疲れて寝てしまったのか。涙が乾いた後なのか、少し頬の辺りがパリパリする。
『起きた、起きたからやめろジェノス。頭がガンガンする…』
起こすのに大きく揺さぶるのは頂けない。
私が起きたのを確認すると、昼食作るのを手伝えと言ってキッチンの方に先に行ってしまった。握りしめていたタオルを持ち洗濯籠に入れ、顔を洗ってから私もキッチンに来た。
「先生は昼食にうどんを所望している。幸いにもうどんなら茹でるくらいでお前でも出来るだろう。教えてやる。それからその前に洗濯物を干してこい、シワをよく伸ばして干せ」
髪が垂れないように纏め手を洗い、調理に取りかかる。
調理といっても定食やの店員のように忙しなく動くわけではなく、茹でうどんを沸騰したお湯に入れ、ほぐして数分待つ。つゆは3倍濃縮タイプらしく、薄めて温める。長ネギを刻む、卵を乗せる…といった感じに教えて貰った。
千切れていたり繋がっていたり、一つ一つの厚さが微妙なネギではあるが、全体的に初めてにしては良く出来た。
「先に先生の元に持っていけ。こぼさないように配慮を。俺とお前の分は後から持っていく」
落とすなよ、とお盆に乗せたうどん。お盆には既に割り箸が添えてあって、このまま置けば片付けも楽だ。
そっとお盆を持つと、鰹だしの香りが湯気と一緒に漂う。あまり乱暴に持っていけばどんぶりからスープが零れてしまいそうだ。
お盆に乗せたままサイタマの前に置くと、サイタマはサンキューと言って割り箸を割る。
2つのどんぶりを乗せたお盆を持ち、ジェノスもこちらに合流する。私も座る事にした。