第15章 13.
『私は…博士に会いたいとか会いたくないとか、そんな思いが無い。どうだっていい。生かそうが殺そうがなんだっていい。ゾンビマンだけで行けば良いと思うよ。
もしも博士が私やあんたみたいな"厄介な奴"造ってたのなら、私を呼べば良い』
あんた以外の連中くらい簡単に始末出来る、そう付け足して半乾きの頭を掻いた。
今回色々世話になったし、過去にも世話になっている。大きな借りは返したい。
私の返事を聞いて、そうか。そういってゾンビマンは持ち込んだ荷物を私に差し出した。
中が見えないビニール袋と紙袋。紙袋には携帯電話のロゴが入っている。私は手に持った茶碗と箸を置いてそれらを眺めた。
「協会からの支給品だ。俺の番号を先に登録しておいたから何かあれば連絡しろ」
『……サンキュ』
新品の携帯だ。紙袋の中身は説明書やら充電器といったものらしく、箱から取り出した本体を手で渡される。
ビニールの方を覗き込むと、これまた服とか下着とかだった。しかも服は許せるとして、下着の色は赤やら黒やら紫といったとんでもない色だ(サイズ自体は大丈夫みたいだが目測で分かるものなのか、寝ているうちに手を出されたのかは分からない)
『チッ』
舌打ちをして見えないように新品の服の下に押し込む。
しかしまあ…良くこんなのを男1人でレジに持って行けたな。
『こちらは頂けない。なんでいちいち派手な下着をチョイスするんだ!つくづく変態だな。あんたの着せ替え人形でも恋人でもないぞ、私は』
「おい、俺に返すな。女装趣味とかそんな趣味はねぇから俺は着ない。むしろお前が着ろ」
『せめてもっと慎ましやかな色や柄を選べ』
「そういう事でキレてんのか。女ってつくづく分からん」
「おい、痴話喧嘩は外でやれや」
冷たい視線が2カ所から刺さるが、これだけは反論したかった。仕方がない事だ。
バナナ一本だけ食べていくと、ゾンビマンは去っていった。