第14章 12.
『路地裏とかでであまり遅くまで寝ていると襲われるんでね、』
といっても、襲われても反撃すれば良い事。昨日は早く寝る事が出来たからだろう。
ジェノスは表情を変えることなく(サイボーグだからなのか、そういう性格なのかは不明だ)上がって来い、と言って窓を閉めた。
今日の私には予定があった。部屋の片付けとサイタマ達との買い物だ。
今までだったら食べ物を探したり、路上で物の修理をして小遣い稼ぎをしたり、ストレスの発散には路地裏を練り歩き怪人を駆除するくらいだっただろうか。野生的な日々を過ごしていた。
それが一昨日からは一転した。一昨日は66号ことゾンビマンに会い、ちゃんとした場所で寝泊まりをし、勉強。昨日はヒーロー協会の試験に合格し、サイタマ達と過ごした。とても濃厚な日々で新鮮だ。
…で、今日の買い物については昨日、鍋を突いている時にこう聞かれたのだった。
「お前明日予定とかあんの?」
勿論掃除以外の予定は無く、無いと答える。するとサイタマは私に紙を渡してきた。
良く見ればそれはチラシ。むなげやと書かれた店のチラシには様々な食材が載っている。大きく丸の付けられた商品もある。
「明日、3人で買い物行こうぜ。お一人様限定3つとかそういったやつもあるからよー、人数居れば多めに確保出来るしなー…ジェノス、そこのポン酢取って」
……と、サイタマに言われ、別に嫌でもなかった私はでは行こうか、と返事をした訳だ。
一つだけの予定で、今日の私には掃除くらいだろう、と思いながら建物の中に入りサイタマの部屋へ戻った。外気が寒かったせいか、室内の空気はとても暖かい。
「今から朝食を作る。お前、何が作れるんだ?一つくらい得意なものはあるだろう」
キッチンの方から声を掛けられ、ジェノスの居る隣に立った。
ゾンビマンに渡されたバナナも場所移動してこちら側においてある。
『残念ながら何も』
何も?と聞き返され、今まで何を食ってたんだという心の声が聞こえてきそうな気がした。