第14章 12.
朝日が昇り、時刻は6時を回った頃。昨晩早く寝付いた私は目を覚ました。
2日連続で暖かく柔らかい布団に入って眠れるなんてなかなかない。これが今晩も明日も続くのだろうと思えば、今更ではあるがゾンビマンに少しばかり感謝していた。大きく伸びをして布団から出る。
私が寝る時に着いていた電気は消えており、カーテンの隙間から差し込む光、カラスの鳴き声。部屋からはサイタマのいびきが聞こえる。
驚いたのはジェノスだ。布団を貸したのはジェノスらしく、壁際に寄りかかって寝て…休んでいた。昨晩食事時に聞くに、彼は体の多くがサイボーグだという。覗き込めば、目の中は完全に黒でスリープ状態と分かる。腹が冷えるとかそういう次元ではないとは思うが、借りた布団をそっとジェノスに被せて、私は外に散歩する事にした。
起こさないように歩き、玄関の鍵を開け、外に出る。
昨日来たときは空は黄昏時で周りがよく見えなかった。場所を良く覚える為にも周りを見ておこう。
外に出て周りを見る。人っ子1人居ない。鳥の鳴き声と風が耳に吹く以外の音はしない。
建物はあるのに、現在は人が住んでいない雰囲気。崩壊した建築物。これは隕石のせいだな。残った建物のあちこちに痛みが見られ、良く見れば戦闘の後とも思える傷もあった。
それじゃあ、博士に改造されて身に付けられた風神の力、思う存分使えるな。地面に向かって飛び降りる。大地に着く前に空気を蹴り飛ばすように、風を足の裏から噴射した。地面が遠くなっていく。もう一歩風を踏みしめるように、噴射して背後の屋上に難なく着地した。
風はやや冷たく、朝日はとても眩しい。ここも十分高いが、あちこち建てられた建築物は更に高く。一般住宅は屋根がよく見え、手入れのされていない家は植物が屋根の半分を覆っている。背中を丸めた猫も集っている。人は居ないが、見渡す限りは平和だった。
さて、そろそろ降りよう。飛び降りて地面に着く前に衝撃を緩和させ、着地した。砂埃と木の葉が足元でくるくると回って、そのまま動きを止める。
その時、頭上からガラッと窓の開く音がして私は振り返り、その音源である一室を見上げた。
「随分と早いんだな」
上から降ってきた声の主はジェノスだった。
大声ではない、が耳には届く。サイタマを起こさないようにだろうか?部屋の中からはサイタマのいびきが聞こえる。