第13章 11.
「おまえ…箸使うの下手くそだな。赤ちゃんなの?」
「おたまを使え、おたまを」
取ったばかりの豆腐の上に醤油を少し垂らし、醤油瓶を元にあった位置、ジェノスの前に置いた。
『箸のトレーニングは、昨日のゾンビマンにみっちり教えてもらったさ、けどだ、昨日今日でそんなに上達はしない』
箸先になんとか乗った豆腐(のかけら)を食べる。
サイタマが鍋から肉を取って、自分のお椀に入れる。
「箸のトレーニングってどんな事したっけ?」
「俺は記憶に残るようなトレーニングではなかったと思いますが」
私は昨日の出来事を2人に話すと、サイタマはお椀の中のスープを飲んで、また白菜などとお椀に入れていく。その動作をしたまま。
「じゃあ、ゾンビマンに習ってお前が箸で食えないようなら俺たちが食わすか」
『え、』
鍋に残された、私が取りそこねた豆腐の片割れをサイタマは器用に箸でつまんで、ニヤリと笑った。
「あっつあつの鍋で食わすって言ったら鉄板だもんな?」
「先生、それは鍋といってもおでんの事かと思われます。適切なる具材は大根やたまごといった、大きめの具材かつ熱を逃さないタイプのものでシチュエーション的には箸のトレーニングではなく二人羽織などの宴会芸で使われる一発芸、もしくはお笑い芸人などが使用するネタであり、目的としては食べさせるのではなく顔面などに高熱の食材を当て、冷まさずに口に運ぶなど、」
「そういうのいいから」
私は自分の手と箸を見つめる。頑張らなくては。あつあつの豆腐など顔に貼り付けられたり口に打ち込まれたりなんてごめんだ…!
白菜やネギ、薄切りの肉がまだまだ沢山入った鍋を囲み、食事をし。温かい湯に浸かり寝支度をして、私はいつもより早めに借りた布団に潜った。
眠りに落ちる前、新たに2つ繋がりが出来かけている事に気付き、私は夢の世界へと旅立った。