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風雷暴見聞録

第13章 11.


間違ったのは仕方がない。が、ゾンビマンの書き残したもの(手紙と、丸が付け加えられた地図のみ)を上着から出せばサイタマも「あー…」と言って黙った。
話は遮られてしまったが、ジェノスと呼ばれた青年は「俺はジェノスだ、サイタマ先生の身の回りの手伝いをしながら修行をしている」と軽く自己紹介する。

『ハルカだ、よろしく』

そう言って部屋に入ろうとした所、手首を誰かに掴まれた。ひやりとして硬い。振り向いて見ればジェノスが掴んでいたようだ。

「1時間ほどで掃除出来る部屋ではなかった。残念ながらお前の部屋は今日は使えん。あとは明日掃除すれば使えるだろう」
「おい、ジェノス。確かに隣の部屋の掃除は少ない時間じゃ無理があっただろうけど、そしたらこいつは俺達の部屋に一晩過ごすって事だろ?いくらなんでもハルカは女だぞ?流石に…、
ふぇっ…ッブシィ!」

部屋からのホコリを吸い込んだのかサイタマはドアの空いた部屋の方向へ大きなくしゃみをする。すると部屋の空気が動き、出口を求め、ぶわっと動いた所で私はドアを閉めた。確かにこれは今晩は無理だ、野宿がマシかもしれない。
サイタマがホコリでまだむず痒いのか、鼻の下を指で擦りながら焦る。ジェノスはそんなサイタマを見、冷静に風呂と夕飯の準備も済ませてありますと続け、サイタマはため息と共に肩をがっくり下げた。

「あのな、」
『私は別に屋根があれば良い』

ぴたり。2人の動作は止まり、サイタマはジェノスを引っ張っていく。私から少し離れた所に移動したかと思うとコソコソと何か話し合っていた。
何か気に障る事を言っただろうか?欲張らず、最低でも屋根の下ならば良いと思っただけだったのに。
少し経ってジェノスはサイタマの部屋に入っていき、サイタマは私の部屋の方にやってくる。ガチャッとドアを開け、「やっぱ駄目だな」と呟いてそっと閉める。そして自分たちの部屋に向かい、ドアを開けた。

「ま、俺等は餓えた変態じゃねーし関係ないか。ハルカ、入れよ。腹減ったしとっとと飯食おーぜ」
『…それは、どうも』
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