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風雷暴見聞録

第2章 0.


──あれから、10年が経つのか。

俺は護れなかった事を悔やみ、唯一の死なない体で何が出来るのかぼんやり考えた。
そして考えた結果、俺はヒーローとなった。そしてたくさんの人を救ってきた。皮肉にも、この死なない体はとても役に立つ。
今ならばあいつを救えるような気がするが、博士に捕まっているのか、森ではぐれて何処かで命を落としているのかさえ分かりはしない。
けれども俺は信じている。ハルカが生きているという可能性に。
とりあえずは新しく何処かで建設されているであろう進化の家を探す事にした。捕まっているのなら、まだ生きているのならば居るはずだと。

進化の家を探していた俺は怪人に遭遇した。半魚人の怪人と森で俺は戦う。
俺の服や筋肉まで溶かす溶解液を出されてボロボロになりながら、泥仕合ながら勝つ事が出来た。
体中が痛ぇ…。筋組織がモロに見えている。その体内に先ほどまで使用していた銃をめりこませて収納した。
回復するまではこの場に留まろう。この森に来るまでに一般人に貰った、バナナを片手に持ち、口で皮を剥いて一口かぶりつく。

さわさわ…、

木の葉が風でざわめく音と、近くの川のせせらぎに交じって何かの気配を感じた。
もしも新たな怪人だったらより疲れるだろう。また、怪人ではなく熊や猪だったら言葉が通じない分、厄介だ。
少し腰を上げて様子を見れば…見間違うはずがない。そこには俺の信じていた可能性が"居た"だなんて、誰が思うだろうな。
懐かしくも成長したあいつの動作を見届けて、傷の癒えた俺はそいつの居るところへと足を進めた。
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